「授乳・離乳の支援ガイド改訂版」が正式に出されたようです。
授乳の定義とともに、こう書かれていました。
乳児は、出生後に「口から初めての乳汁摂取」を行うことになるが、新生児期、乳児期前半の乳児は、身体の諸機能は発達の途上にあり、消化・吸収機能も不十分である。そのため、この時期の乳児は、未熟な消化や吸収、排泄などの機能に負担をかけずに栄養等を摂ることのできる乳汁栄養で育つ。
新生児期から乳児期前半の「授乳の支援」の難しさが明確に記されるようになったことは、とても前進だと思いました。
ほんと、生まれた直後からの新生児に授乳をするというのは、簡単なことではないのです。そして、その難しさも日々新生児に接している私たちでさえうまく表現できないし、なぜ難しいのかという理由はまだまだ「わからない」としか言いようがない段階です。
「母乳育児」のためには出生直後から例えば1日に8回以上とか10回以上といった数値で、頻繁に吸わせることを勧められますが、実際の出生直後からの新生児というのは頑として口さえ開けなかったり、しょっちゅう吐いたりして、生後24時間以内に1〜2回の授乳もできないこともあります。
赤ちゃんは3日分のお弁当と水筒を持って生まれてくるから、あまり飲まなくても大丈夫なんてことはなくて、生後数時間ぐらいでも低血糖を起こし始めることがあるので、なんとか飲みそうなときに少しずつでも授乳を試して見るうちに、ゲボゲボしている新生児なのに飲みたそうな瞬間があります。あるいは、だんだんとゲボゲボと吐かなくなるタイミングがあるようで。
ああ、この変化を待っていたのか、これを伝えたくて泣いたりぐずったりしていたのかとパターンが繋がって見えてきて新生児の哺乳行動とは、消化吸収排泄までの統合的な複雑なしくみなのだということが見えてきたのでした。
だいたい、胎便が2〜3回ぐらい出ると、少し哺乳意欲が出てくるようです。
ようやく、哺乳意欲が出てきたと安心していると、ミルクを足していても体重が7〜8%ぐらいまで減少する時期に入ります。
なるべくミルクは足さずにと頻回授乳で頑張っていたお母さんが焦り、不安が大きくなる時期です。
さらに黄疸が強くなると、それまで頻繁に吸っていた新生児が再び吸わなくなって眠りがちになってしまうこともあります。
なんとかその黄疸の時期も超えて、少しずつ体重も増え始めて退院した後、「赤ちゃんはよく吸ってくれて、おしっこもうんちもよく出ていたのに」、2週間後とか1ヶ月健診で、ほとんど体重が増えていないこともあります。
頑張れば母乳で育てられると思っていたお母さんが、赤ちゃんにかわいそうなことをしたと自分の判断に自信をなくしてしまうことでしょう。
「母乳が足りている目安」としてよく耳にする、「オムツがずっしりするほどのウンチ、オシッコの回数」もあてにならないことがあります。
産院のスタッフの、「母乳の飲ませかた」の技術的なものや熱意が足りなかったのでしょうか?
そうではなく、新生児期というのは授乳にだけに気を取られずに、もっと複雑な「消化・吸収の発達途上」であることに注意してみていくことが必要だということなのだと思います。
24時間、医療の専門職によって新生児が観察されるようになってたかだが半世紀なのだと、冒頭で紹介した箇所がようやく言語化されたのだと思いました。
生後1ヶ月ごろまでは、生き延びさせることが難しい時期だからこそ「新生児」とあえて時期が括られているのだろうと、切実に感じるようになりました。
ほんとうに栄養を与えていれば育つというわけではないので。
次の改訂版では、新生児期の授乳の全体像がもう少し明らかになって、「新生児期の授乳」という独立した章ができるといいですね。
「授乳・離乳の支援ガイド」のあれこれまとめはこちら。
新生児の「吸う」ことや「哺乳瓶」に関する記事のまとめはこちら。