水のめぐみ館アクア琵琶の「瀬田川洗堰」の資料とともにもう一冊、何気なく手にとって持ち帰ったのが、タイトルのブックレットです。
「琵琶湖・淀川水質保全機構」「日本水環境学会関西支部川部会」「近畿建設協会」が平成28年(2016)に発行したもので、無料配布されていました。
帰宅してからパラパラとめくってみて、「ああ、こんな川のガイドブックが欲しかった」と感激して読んでいます。
「川は、人々の心を癒し、和ませるものである」という文章から始まっています。
そしてこのブックレットができた経緯が以下のように書かれていました。
公益社団法人日本水環境学会関西支部川部会は、2001年9月に近木川で開始して以来その癒しを求めて、水辺環境として河川の持つ3つの役割(治水、利水、環境)に目を向けながら、関西の川を実際に歩いてきた。そして、その河川で技術的行政的な課題は何か、等々の視点から、地域住民やNGO・NPOのみなさんとの交流を深めながら、水質、生物の生息空間、景観、周辺の歴史・文化、住民参加などについて観測評価する活動を続けてきた。その結果は、自然と人間の関わりが深いことをあらためて認識するものとなった。あるいは表現を変えれば、川には必ず人々の生活があるということを感じるおのとなった。また、近年提唱されている里山、里海とともに里川という概念に通じるものでもある。
そんな中で、2009年公益財団法人琵琶湖・淀川水質保全機構と一般社団法人近畿建設協会から琵琶湖・淀川流域の河川を散策する時に気軽に傾向できるガイドブックを製作する話が持ち込まれ、企画することになった。
その後、6年間で24編が発行され、それに琵琶湖を加えたものがこの総集編のようです。
「琵琶湖・流入河川」「宇治川水系」「鴨川水系」「桂川水系」「木津川水系」などにまとめられ、それぞれの川や周辺の地理・歴史がまとめられています。
たとえば、「水のめぐみ館アクア琵琶」のすぐそばで瀬田川に合流する大戸川ですが、少しだけ遊歩道を歩いてみました。
それだけでは皆目、見当もつかない歴史にすぐにたどりつくことができます。
洗堰の下流左岸から合流する大戸川流域には、明治時代のオランダ人技師デ・レーケの功績による近代砂防の土木遺跡が残る。
木曽三川分流工事と三国港突堤で知ったあのデ・レーケ氏の名前をここで見るとは。
「3-2 大戸川」ではさらに詳しく書かれています。
田上山地は深層風化の進んだ花崗岩が基岩で 、その独特の急峻な地形は湖南アルプスとして知られている。近代砂防発祥の地でもある。弥生時代からたたら製鉄が盛んで大量の薪が消費され、さらに藤原京や平城京の造営、東大寺などの建立に多くの巨木が伐り出された。そのため江戸時代にはすっかり禿げ山になっており、大戸川は斜面崩壊を起こしやすく流入土砂量が多い暴れ川であった。1873(明治6)年に淀川水源砂防法が制定されて近代的砂防工事が始まり、2014年に完了するまでに136年の長きにわたって流路安定工や山腹緑化工などが行われた。支流天神川にはデ・レーケが指導して建設された鎧堰堤(砂防堰堤)が当時の石組みのまま現存している。
ブックレットなのでそれほど文章は多くないのですが、この数行を読んだだけであの大戸川の周辺の現代に通じる歴史が浮かび上がってくるかのようです。
歴史を学ぶというのはこういうことなのか。
一本の川から世界が広がっていくことに、この年になって興味がつきません。
今度はこの散策ブックに書かれている川をすべて歩いてみたくなるではないですか。
困りましたね。
日本津々浦々の川がこんな感じで本になり網羅されたらと、楽しみです。
無料なのは申し訳なさすぎるので、こうした活動を支える人たちにきちんと資金がまわるようにするにはどうしたらよいのでしょうか。
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