境界線のあれこれ 97 屋外と屋内

思えば総合病院の産科病棟でさえも、2000年代初めまでは病棟内の看護師休憩所はたばこの煙でモクモクとしていたのですから、医療従事者の喫煙に対する意識も急激に変化した時代ですね。

喫煙の身体にもたらす影響をすぐに医学的に理解できるはずの医療従事者でさえ、なかなか喫煙をやめられなかったのですから、医学的正しさだけでは人の行動や嗜好を変えられるものではないということでしょうか。

 

この4月から自治体レベルではありますが、東京都の受動喫煙防止条例が施行されることになったことは大きな一歩ではないかと思います。

もちろんたばこを吸う自由もあり、それを社会の中でどのように法律で線を引くのか。

社会の中に法律が増えるということはどういうことなのか、何が変化するのか。案外知らないことばかりです。

 

*屋外と屋内の線はどこで引かれるのか*

 

東京都の条例が話題になり始めた頃、「原則屋内禁煙」という点がニュースでは強調されていました。

それが徹底されれば、例えば禁煙のはずの駅構内で不意打ちのようにたばこのにおいが漂ってくることも、おそらく少なくなることでしょう。

 

それはそれでありがたいけれど、歩きタバコとか、屋外の喫煙所の煙とか、そのにおいが数十メートルも漂う場所を歩かなければならないことの方が日常的につらいものがあります。

屋内が禁止されれば、屋外で吸う人がかえって増えるのではないかと心配です。

 

たとえば私の最寄りの駅までの通勤路では、路上禁煙区域を含めて、わずか数分の間に何人もの歩きタバコの人と出会います。

不思議なのは、踏切で遮断機が降りているときに立ち止まらなければいけない場所にたばこの自動販売機があり、喫煙所があることです。

建物と建物に挟まれた風通しも悪い場所ですから、なおさら煙が電車の通過を待っている人たちに容赦なくかかります。

 

渋谷のスクランブル交差点新宿駅前のように、多くの人が通行する場所の喫煙の問題が解決されるにはまだ時間がかかるのでしょうか。

 

単に屋外と屋内という線引きだけでなく、どれくらいの人が通過する場所なのか、相手との距離はどれくらい保てる場所なのかによって、このたばこの煙の漂う数十メートルから守る線があるとありがたいですね。

 

まあ、受動喫煙についての意識もここ10年で大きく変化してきたので、次の10年にまた期待しています。

 

 

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