行間を読む 95 世の中はそこに暮らす市井の人の正確な記憶と記録によって成り立つ

昨日紹介した白子川について書かれたブログには「白子川 2   ー中流から河口までー」という続編があります。

こちらも興味深い内容でした。

 

 白子川 は、源流から河口までのほぼ全域に、両岸あるいは片側に散歩道がある。所どころ湧水が流れ込み、小魚や水鳥の居心地をよくしている。途中、春はカタクリの花で覆われる清水山、武蔵野の姿をそのまま残す稲荷山など市民憩いの森があって、都会の騒音から離れ、家族中で楽しめる。前回は、源流から目白通りを横切った地点までやってきたが、今回は、その先の東京と埼玉の県境を流れる白子川の中流から荒川支流の新河岸川との合流点まで歩く。

 しかし、その川沿いの快適な散歩道も、所によって川べり一杯に民家が立ち並び、側道が途絶える箇所があり、そんなところでは民有地を迂回しなくてはならないのだが、特に、練馬区が飛び地のように和光市内に喰い込んでいる地域では、地図や住所表示板だけを頼りに行くと、自分のいる位置がわからなくなる箇所がある。

 出発点の源流からほぼ6キロ先に行ったところにある越後山橋は、東京(練馬区)と埼玉(和光市)の境だが、橋を渡って埼玉県境を川沿いに行くと、和光市第5小学校前の車道に出る。白子川は、その通りに架かる芝屋橋の下を流れ、両岸の民有地の間をいく(上の写真)。仕方なく、橋を渡り、200メートルあまり直進すると笹目道路(国道443号)に出た。地図の上では、白子川は笹目通りの下を暗渠になってくぐり抜けているので、笹目通りを渡り、牛房通りに出ればいいと見当をつけて行ったが、川は見つからず、また、町の掲示板は、和光市だけでなく、練馬区旭町だった。

 通りがかった地元の人に、「牛房通り」への道を尋ねたが、わからず、練馬区の人ではわからないのだろうかと、そのまま行くと、偶然、牛房通りにでた。そして、牛房通りを「うしふさ通り」と言って道を尋ねた私の誤りに気づいた。道路標示には、ご丁寧にも「ごぼうどおり」と振り仮名がしてあり、そこは和光市白子1丁目だった。通りに面して大きな旧家があり、通りがかりの人から、この屋敷の持ち主は、この辺り一帯の大地主で某カメラ会社社長だった人の邸宅とうかがった(上の写真)。

 この屋敷の崖下を流れる白子川沿いに架かる小源治橋を渡ると、また練馬区(旭町3丁目)に入る。民家と農地の間を流れる白子川が見え隠れする道から川に近付けそうな路地を下りると、突き当たりにフェンスがあり、行き止まり。

 思案に暮れていると、右手の家の方が庭を掃除中。声をかけ、道を尋ねると、全くの僥倖に巡り合わせた。家の御主人は「白子川水辺の会」の会員だった。住宅地域を通り抜け、次の橋の子安橋で白子川に出会える近道を事細かく教えて頂けた。さらに、そこから先は、農地や住宅地があって、川に近づけないが、川越街道に出たところに架かる東埼橋からは、河口の落合橋まで両岸に散歩道が整備されていること、東埼橋は埼玉東(和光市)と練馬区(旭町)と板橋区(成増)が境を接する場所で、昔、ここに川越街道白子宿があったことに因んで白子川と名付けられたこと、東埼橋の下には3メートル近い断崖があって荒川から上ってきた魚は上流へはいけないが、その先の東武東上線鉄橋の下を通って、なります団地のある白藤橋辺りまで行くと、鯉が泳いでおり、荒川から上ってきたボラ、スズキ、ウナギなどが見られることもあり、平成になってからもアユの遡上を板橋区が確認したこともあったこと、また、白藤橋の先へ行くと河川管理用道路の表示があり、これは白子川の増水に備えて両岸にコンクリート碧を築き、道より一段と高くした歩行者用の袴道橋が二か所あること、など。日頃から白子川を案内されている方だけに話は詳しい。

 こうした予備知識を得たお陰で、子安橋から荒川支流の新河岸川に架かる落合橋までのほぼ3キロの行程を楽に進むことができ、無事に目的地にたどり着いた。源流から此処まで来るのは、徒歩では無理、車ではなお駄目、やはり自転車が一番だ。(写真上は、落合橋の先に荒川の土手が見える。下は、土手から見た白子川と新河岸川の合流点に架かる落合橋)

 最後に、種々、教えていただいた旭3丁目の白子川の会員の方にお礼を申し上げます。

 

 

散歩の前に地図で周到に道を確認しても、「あるある」な話に深くうなづきました。

実際に歩いてみると、どうしてそこで道がなくなっているのか、なぜ行政区がそこで変わるのかと、不思議なことがたくさんあります。

そしてちょっとしたその地域の歴史が表示されていたり、資料館などがあると、平面の地図から立体的にその地域の歴史を思い描けるようになる楽しさがあります。

 

この文章を読んで、ふと思いついたのが今日のタイトルでした。「正確な」というのは難しいのですけれど。

 

 

 

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