助産師の歴史  1  <記録に残しておきます>

最近タイトルに「助産師」が入っている記事が続いているので、ちょっと食傷気味の方もいらっしゃるかもしれません。


自分自身の仕事が好きだから将来の助産師の行方を心配して記事にしているという部分もありますが、最近では助産師の業界は変だと思うことがあまりに多すぎて、正直なところあまり助産師とは名乗りたくない気持ちが強くなってきています。


助産師の中にある民間療法的なことへの偏りについてはだいぶ前からおかしいと考え続けていましたが、何分、当時はまだまだ反論できるほどの知識も経験もありませんでした。


数年前の産科崩壊の危機という時期に、助産師の一部から「助産師を活用するチャンス」と盛り上がっているのを知って、助産師の業界に対する私の不信感は決定的になりました。
産科崩壊の少し前から「院内助産」システムという言葉を公に、まじめに使い始めたのにも驚きました。
そして看護師内診問題での助産師側の対応は、産科医との信頼関係を損ね、日本の周産期医療に禍根を残したと言ってよいものだと思います。
あるいは助産所の医療事故のリスクマネージメントの未熟さ、助産師会主導のホメオパシーの研修会や法的根拠もないままに進められていく会陰縫合術の演習セミナーなどなど、知れば知るほど本当に助産師と名乗るのはやめたいと思わせるに十分なことでした。


病院に勤務しているとちらほらと助産院からの搬送の遅れや母乳相談での行き過ぎた指導や根拠のない指導などを見聞きすることもありましたが、その助産師個人の資質・力量ぐらいの受け止め方で、助産師全体の問題として考えることはありませんでした。目の前のお母さん、赤ちゃんたちへの対応で手一杯でしたから。


ふと顔を上げてみると、そこには助産所賛美の風が吹いていました。
久しぶりに購入した「助産雑誌」も「助産所に学べ」というような記事ばかり。
マクロビとか整体とかでしたけれど・・・。
いつの間にか、「助産師だけでの分娩介助を」という声が強く大きくなっていました。


そして助産師を育てる教育界がからもこんな発言がありました。
安心と希望の医療確保ビジョン会議
http://lohasmedical.jp/news/2008/03/19114413.php

たしかに、助産師がすべて責任をもと担いたいと考えているわけではなく、腰砕けになるグループもある。しかし開業している腰の据わった方々のモデルがあり、それを見て、だんだん責任のとり方を学んでいる。施設内の一人一人もプロセスを経て、学んで徐々に覚悟をきめていくのだと思う。(p.5)

医師のいないところで助産師だけで分娩介助することを「助産師の自律あるいは自立」だという人たちは、現実の分娩の場を本当に知らない人たちだとわかりました。
医師と共に慎重に分娩介助することを「腰砕け」なんて公の場で言われているなんて、助産師の業界は本当に品がないと思いました
怒りとか落胆よりも、なんだか「下品で恥ずかしい」という気持ちです。


助産所の開設問題に関する質問主意書


先日ネット上で流れていました。
ほとんどの方は安全性を求めて医療機関で出産することを選択しているので、助産所の需要は今以上になることはないと思います。ですから、この質問書を取り上げることはかえって助産所の話題づくりに貢献してしまう可能性がありますが、どうしても記録として残しておきたい部分がありました。


助産所の開設問題に関する質問主意書丸川珠代
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/180/syuh/s180077.htm

しかし、近年、出生数の減少により、地域の診療所あるいは病院の産科医が、助産所に対して競合関係を意識するがゆえに、助産所での分娩は安全性に問題があると主張して、助産所の開設者からの嘱託依頼に応じず、開設がままならない事態が生じている。

四.特に高齢化の進んだ人口過疎地や、産科診療所や病院が過密な都市部においては、助産所と病院・診療所が競合関係になりやすいことから、医師に対して助産所の開設者からの嘱託への応召義務を課すべきと考えるが、政府の見解を問う。

六.産科医不足への対応に加え、より自然で人間らしいお産を望む国民に応えるため、助産所と病院・診療所の連携が必要と考えるが、政府の見解を問う。


どのような経緯で、誰の陳情によってこの質問書が提出されたのかはわかりませんが、周産期医療の現状を本当に本当に肌身を持って知っている助産師なら、もっと違う表現での質問書を書くようにアドバイスできたと思います。
いや、それ以上に「助産所よりは産科医・小児科医を増やして欲しい」という質問書を書いて欲しいと思ったことでしょう。
産科医がいなくなって産科病棟閉鎖に追い込まれた病院が全国にたくさんあるのですから。


ちなみにうちのクリニックにも助産所の嘱託医のお願いがきました。
助産師側の反対で、お断りしました。
競合関係とは感じていません。
それよりも信念が強くて標準的な産科医療の常識が通用しなさそうな助産所をたくさん見聞きしてきたので、もしそういうところから分娩途中で搬送されてきた最終的責任を負わされるとしたら、あまりに荷が重過ぎるからです。


そんな自らの至らなさを反省せずに、こんなことを国会議員に書かせる助産師がいる。
本当にこんな助産師の業界は恥ずかしいと私は思います。


そして助産師の歴史はそういう流れが脈々と続いていることに、ようやく目が覚めました。
助産師の黒っぽい部分、不定期ですが記録に残していこうと思います。
そんなわけで「今日はちょっと黒」のふぃっしゅでした。



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