助産師の世界と妄想 15 <わからないことはわからないとする態度>

NHKのこのニュースへの違和感から連続して書いて来た記事ですが、もうひとつ腑に落ちなかったのが最後のこの部分でした。

このほか、げっぷが出にくい子に対して、東京助産師会は、寝かせるときに顔を横にしてしばらく様子をみることも事故防止につながると呼びかけている。


なぜ、ここで「助産師会」のコメントが入るかが気になったのでした。
しかもほとんど意味のない呼びかけですし。


あ、今日の記事は「ちょっと黒」のタグがつきます。


<乳児の事故死を社会で考える>


分娩施設に勤務していますから、私自身も乳児あるいは幼児の事故については関心があります。
入院中あるいは1ヶ月健診ぐらいまでのあいだに、少しでも事故防止のために啓蒙活動の一役を担えればと思っています。


どこから情報を得るかといえば、十数年ぐらい前のインターネットでもまだそれほど情報が無かった時代には新聞や雑誌などから得たこと、あるいは身近で聞いたヒヤリとした話をお母さんに伝えていました。


最近は、日本小児科学会の「Injury Alert(傷害速報)」を始め、より専門的に分析した内容を目にすることが可能になり、参考にしています。


助産師の中でも勧めることが多かったスリングも心肺停止の事例があることを知り、産院でお母さんたちに注意喚起をしたのもこの速報のおかげでした。



「個人的経験談」からの注意喚起の時代から、社会全体の中で乳幼児の事故の全体像が見える時代になったと感じています。


そして、さらに小児科医だけでなく監察医やさまざまな専門職が集まって「子どもの死に関する情報システム」ができ始めているということを、今回のニュースをきっかけに知ることができました。


助産師は何をすべきか>


昨年11月に開かれた東京都監察医務院の公開講座の内容のニュースがなぜ今頃報道されるのか、そしてなぜ東京都助産師会がコメントを求められたのかその背景はよくわかりませんが、このニュースの内容であれば、NHKは小児科学会のコメントを出した方が適切ではなかったかと思います。


あるいは小児看護学会などでも乳幼児の事故に関する啓蒙活動の蓄積があることでしょう。


なぜ助産師会なのでしょうか?


そしてたとえコメントを求められたとしても、「原因究明や予防策については小児科医に確認してください」「(助産師の)私たちは答える立場にない」とはならなかったのでしょうか?
助産師がこれまで新生児・乳児の事故死について、何らかの調査・研究の実績があればコメントもできるかもしれませんが、今までそのようなことは聞いたことがありません。


どこかに「助産師は出産・育児の専門家だから何か答える必要がある」という思い込みがあるのかもしれない。
そんなニュアンスを感じ取ったニュースでした。


そして自分たちの権威が大事な妄想の世界にはリスクマネージメントという言葉は生まれないのかもしれません。


私はこのNHKのニュースを聞いてまず気になったのが、月齢の低い乳児に対してスリングや「正しい寝かせ方」としてむしろ気道を塞ぐような姿勢を良い方法として広めている助産師がいることでした。


本当はそういう方法は危険ですよと啓蒙する立場にあると思うのですけれど。





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