乳児用ミルクのあれこれ 41 <周産期・小児の専門栄養士なんてどうでしょうか>

乳業会社からの栄養士さんとは距離を置いていた私ですが、日本で10年遅れぐらいで「途上国のミルク批判」が広がったのと逆行するように、2000年代に入る頃からはこうした乳業会社の栄養士さんの置かれている状況に関心が出始めました。


どのような動機でこの仕事を選んだのだろう。
どのような勤務形態なのだろう。
どのような研修があるのだろう。
乳業会社という枠を越えた、職能団体はあるのだろうか。


母親学級や調乳説明だけでなく、妊娠中の貧血や高血圧、体重管理あるいは妊娠糖尿病予防のための食事指導が必要な方が多くなり、栄養士が雇用されていない小規模な産科診療所では、乳業会社の栄養士さんに個別栄養指導をお願いすることがあります。



私たち看護職は経営のことはほとんど知らないのですが、当然、こういう個別指導をこちらからお願いしたことに対して報酬が支払われているものだと思っていました。
ところが、「実は・・・ボランティアのようなもので。会社からの給料だけです」と聞いて、驚きました。
パートという不安定な条件なのに、ご自分の空いている時間を使って来てくださっていたのです。


こういう持ちつ持たれつの関係をきちんと見直し、乳業会社との契約を明確にしなければ、いつまでたっても「Not anti-baby milk, but irresponsible marketing」(乳児用ミルクに反対しているのではなく、その無責任な販売方法に対抗している)といいつつ、ミルクを否定する活動への口実を与え続けることになります。


また小規模な産科医施設では、最近増えている、複雑多様化した食物アレルギーの方々への食事作りにも頭を抱えている施設も多いことでしょう。


現実的に、看護スタッフさえギリギリの人数でまわしているような小規模な産科診療所で、栄養士さんを雇用することは人件費の点で難しい施設が多いのかもしれません。



でもやはり妊娠中から子育中まで、連続した栄養の知識を提供する機会とその栄養士さんの存在は大事です。


現状を大きく改革するためには時間が必要だと思いますが、「周産期・小児期」の経験を積んだ栄養士さんたちの専門性を認めて、乳業会社からの派遣ではなく、地域の中で雇用して必要な施設に派遣するようなシステムができたら良いのではないかと思います。
ええ、すごい理想論なのですが、どこからか現状を変えないと、乳児用ミルクをスケープゴートにした「母乳VSミルク」の時代に終止符をうつことができないのではないかと心配です。


もう少し続きます。



「乳児用ミルクのあれこれ」まとめはこちら


「汚れたミルク」という映画を観て考えたことを書いた記事のまとめはこちら