「10年ひとむかし」 まとめ

1980年代に東南アジアで働いたのは20代半ばでした。
その時に第二次世界大戦で日本軍がその国にしたことを直接問われた経験を、「一世紀という歴史の意味」に書きました。


「自分が生まれていない30年前、40年前のことも当然ですが現実感がなく、とても昔だと感じていました」



帰国してから1980年代終わりに助産師になった頃、「昔のお産は良かった」という自然なお産への動きが強まっていました。


私が生まれたのはちょうど、医療機関での出産が日本の全分娩の半分になった1960年代初頭です。
私は病院で生まれましたが、同年代の半数はまだ自宅で、しかも助産婦さえ呼ばれることもない出産もあったとは、助産師になった当初は想像もしていませんでした。


まして、1960年代以前の日本のお産がどのようなものだったか、当時20代の私に現実感がないのも仕方がないことでした。
開発途上国の母子保健を見聞きしていた私でさえも、「日本の昔のお産は、家族に見まもられてあたたかいお産だった」というイメージに強く影響を受けていきました。


2000年代になる頃には、私自身、「お産には何があるかわからない」という怖さを何度も経験して、ようやく「自然なお産」の呪縛から解放されました。


ところがその頃から、まるで人類は今まで母乳だけで育てられて来たかのような幻想が広がり始めました。「完全母乳」という言葉とともに。


さすがにそれはあり得ないのに、なぜこういう雰囲気が広がるのだろうと考えていた時に、おそらく今の出産年齢の20代から30代の人たちにとって、10年、20年という時間の流れと変化がまだ現実感として感じられない年代だからではないかと、ふと思いました。


第二次世界大戦のことが大昔に感じたあの私の感覚のように。
そして昔のお産を理想化してイメージしてしまったように。


そこで、10年ぐらいの単位で振り返ってみると案外おもしろいかもしれないし、1世紀という長さの歴史につながる視点があるかもしれないと、思いついたタイトルです。


まあ、半世紀ぐらい生きても、人類の歴史から見たらひよっこなのですけれど。


<2014年>
1. 10年ひとむかし
2. 辰巳に通って10年
3. 「カラーでよみがえる東京」
<2015年>
4. iPhoneはどうなるのか
5. 葛西臨海公園
6. 近未来の交通手段
<2016年>
7. 人の手となり足となる
8. 夢の使い捨ての布のような紙のようなもの
9. 花粉症とつきあう
10. 使い捨てマスク
11. 入院中の洗濯物
12. 体重を測る
13. 時代は悪くなったのか
14. オリンピック放送の進化
15. 電車の中のいろいろな変化
16. 大舞台でも集中する
17. 小分け調味料
<2017年>
18. 軽くて暖かい
19. 石油から繊維
20. チョコレートは幸せな気分になる食べものだった
21. 梅の実の活用
22. マタニティマークとヘルプマーク
23. 赤ちゃんのお尻ふき
24. 正確に時を知る
25. 記録を残す手段
26. ぶーふーうーの家
27. 「22才の別れ」の感じ方
<2018年>
28. 「言葉は10年後には違う意味になる」
29. 野菜や果物の保存
30. 雪に対するリスクマネージメント
31. 動画
32. キャッシュカード
33. 特別養護老人ホーム
34. 適切な温度で過ごせるようになった
35. 驚異的に変化する時代がある
36. 層が厚くなる
37. 防災と公園
38. 自分が何をしたいのか言えるようになった
39. 休みが増える社会で、休みが少なくなる
40. 倉敷美観地区
41. 10年前の携帯電話とリスクマネージメント
<2019年>
42. 寒さに強くなったのか
43. 言葉の半世紀
44. その言葉が使われ始めた時代
45. 摩天楼
46. 杉と花粉症
47. 木材
48. 観光
49. 鉄道を残して欲しいな
50. イデオロギーから世界観へ
51. 自宅の通信障害
52. 「人口」についての半世紀.
53. 新幹線と高速道路
54. 路線バスの変化
55. 使い捨てカップの飲み物
<2020年>
56. 数日で河岸段丘がなくなった
57. 住宅街の梅はどうなるのだろう
58. 身元保証に関する契約
59. 受動喫煙という言葉が定着した
60. それは私の大腿部です
61. 荒川放水路のヨシ再生
62. 感染症対策にも強い住環境
63. 口の開け方が変化したのかもしれない
64. とうとうお気に入りのお店が閉店
65. 引き戸
66. 医療機関と引き戸
67. 映像を見ながら会話する
68. パスポート更新
69. 災害時の対応の変化
70. 生活上の小さな障害に対応したものが増えた
71. 旅から旅行、観光、そしてこれからは?
72. 犯罪として認められるようになった
73. 災いを転機にする
74. 「知っている世代」と「知らない世代」
75. 初めて録画予約を忘れた
<2021年>
76. 「会食」は古い政治の言葉
77. ずっと前からあったような気がしてしまう夢のような世界
78. 海岸線の養殖場と内戦
79. 矢作ダムと堆砂
80. 労働の対価としての適正な価格
81. 「学校のプール、廃止相次ぐ」
82. エコバッグが溢れる街の風景の一年
<2022年>
83. 都内の長水路プール
84. 川崎駅のあたり
85. 半世紀の車窓の風景を行ったり来たり
86. 30年前だったらどうなっていただろう
<2023年>
87. ICカード乗車券の20年
88. 「富裕層を呼び込む」
89. 高級魚は海外へ
90. 新幹線内のチャイム
91. 浦島太郎の気分
<2024年>
92. 「人類の為」から「他人の存在を感じていない」へ
93. 武蔵小杉のS字カーブのあたりの変遷