日記がわりの手帳を引っ張り出して、2018年5月の散歩の記録を読み返すと、この日は「プールは休んで散歩へ。京王線分倍河原駅→矢川駅→矢川緑地→矢川→ママ下湧水→国立郷土資料館→谷保天満宮→国立」と書いてありました。
たぶん、初夏のお天気に屋内のプールはもったいないと、以前から行ってみたかった場所を訪ねることにしたのだと思います。
この計画は今のように地図を眺めて見つけた場所ではなくて、「川に沿った段丘沿いを歩いてみたい」と思い始めていた頃に出会った「東京湧水 せせらぎ散歩」を教科書にして、都内の湧水を網羅してみようと歩き始めたのでした。
なぜ「川に沿った段丘を歩いてみたい」と思ったのか、その動機を逆方向から思い返そうとしたのですが、案外、自分の動機はどこから来たのかさえあやふやなものですね。
今回は、2018年とは反対側から歩いてみました。
*谷保堰からママ下湧水公園へ*
谷保堰のそばにも、水田が残っていました。大晦日の散歩のメモに「カワセミ」と書いてありますから、実際に見たのだと思います。鳥好きの方なら歓喜の出逢いのはずが、メモにしていながらもすでに3ヶ月ほど前の記憶が曖昧になっているのは、気持ちがこの先にある湧水に占領されていたのだと思います。
谷保堰から分かれた支流に沿って100mほどいったところを北側へと歩くと、すぐに段丘とその下の水田が見えてきます。
段丘といってもわずか2~3mでしょうか。
その下に、水が滔々と湧き出て、主な湧水だけでなく崖のあちこちから水が染み出しています。
青柳段丘とママ下湧水
この辺り一帯には、高さ八メートル前後の段丘崖(だんきゅうがい)が連なっており、北側には青柳段丘が、南側には古来多摩川の氾濫原であった低地が広がっています。
がけのことを地方名で「まま」とも呼ぶことから、ここから湧き出る地下水を、ここでは「ママ下湧水」と呼んでいます。昔からこの一帯は豊富な湧水群で、昭和初期までは、わさび田が見られました。
すぐそばの畑では、ほうれん草の収穫をしている方がいました。
湧水からわずか数十メートルですでに水量が豊富な水路になり、一旦、いずみ大通りの車道の下をくぐるとそこには水田地帯が広がっています。
先ほどまでの「湧き水」から続いていると信じられないほどの水の流れに、さらに矢川の流れと府中用水の流れが合流する場所です。南側には中央自動車道が通っているのですが、ここだけ江戸時代、いえもっともっと前からの変わらない水の風景のようで、2018年に初めて訪ねた時には鳥肌が立ちながらしばらくの間、水の音を聴いていたのでした。
田畑はどなたか個人のものだと思うのですが、そのそばを散策できるようになっています。
「(またお邪魔します)」と、あれから3年半ほどこの風景が変わらずにあることに感謝しながらそっと、しばし水の音を聴いてきました。
ずっとずっと、これからも変わらずにありますように。
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