実験のようなもの 10 電動キックボードの「実証実験」の結果とは

先日、交差点で信号待ちをしていたら、音もなく電動キックボードに乗った女性が二人、目の前を過ぎていきました。

実際に見るとけっこうなスピードが出ますね。

 

スカートをひらりとなびかせながらというカジュアルさで、あの細い板に両脚のバランスだけで立っている姿は見ているだけでもヒヤリとしました。

電動キックボードでの転倒事故の動画を見ると、本人の転倒だけでなく、転倒したはずみで吹き飛ぶように近くを歩いている人に体当たりしている場面もあって、他の乗り物に比べてもリスクが高そうな印象です。

 

*「特殊電動キックボードの実証実験」*

 

警視庁に「特殊電動キックボードの実証実験」の経緯がありました。

実証実験の内容

産業競争強化法に基づき、令和3年1月、事業者から経済産業大臣に新事業活動区域において貸し渡される電動キックボードに関する特殊措置の要望書が提出されました。これを受け、令和3年4月、国家安全委員会及び国土交通省において「道路交通法施工規則」及び「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」の定期用に関して新たな規制の特殊措置を講じられたことから、本特例措置の対象となる電動キックボード(以下、「特例電動キックボード」という。)の通行に関する安全性等について検証するものです。

 

具体的な検証内容はわからないのですが、関連サイトの経済産業省へのリンクにはこんな説明がありました。

電動キックボード

現在、電動キックボードは道路交通法上の原動機つき自転車に分類されており、ヘルメットの着用が義務となっているとともに、車道(車両通行等の設けられた道路においては、最も左側の車両通行帯。車両通行帯の設けられていない道路においては、道路の左端。)を通行すること等とされています。

事業者より、原動機付き自転車として扱うことは合理的でないとして、新事業特例制度を活用し、令和3年1月25日付けで下記の特例措置の整備について要望がありました。

運転時のヘルメット着用を任意とすること。

・普通自転車専用通行帯の走行を認めること。

自転車道の走行を認めること。

・自転車が交通規則の対象から除かれている一方通行路の双方走行を認めること。

その要望を踏まえ、規制所管官庁である国家公安委員会及び国土交通省において、上記の点に関する特例措置が整備されました。

(強調は引用者による)

 

自転車でもヘルメット装着の時代になっているのに、自転車よりもスピードが出る電動キックボードでヘルメット不要とはどのように安全性を検証したのでしょう。

 

 

*どうしたらこういう結果が導かれたのだろう*

 

4月20日に驚くニュースがありました。

「ほぼ自転車」電動キックボード規制緩和!免許不要の改正道路交通法が成立!既製品はどうなる?

 

 改正法では、最高速度が20km/h以下など一定の基準に該当する電動キックボードは、「特定小型原動機付自転車」という新しい車両区分とされます。

 16歳未満の運転を禁じる一方、16歳以上であれば免許不要で運転できます。ヘルメットの着用は任意です。

 走る場所は原則として車道ですが、最高速度6km/h以下の走行モードであれば自転車通行可能な歩道も走行できるようになります。

 改正道交法のうち特定小型原動機付自転車に関しては、2024年6月までに施行される見込みです。

       * * *

 現在、基準に適合する電動キックボードは原付バイク(原動機付自転車と同じ扱いであるため、公道を走るには免許やヘルメット、ナンバープレート、自賠責保険の加入などが必要です。

 今回の改正ではこれらの規制が緩和され、差異はありますが自転車のようにさらに気軽に乗れるものになります。

 今後は施行に向けて、新しい交通ルールの周知や、特定小型原動機付自転車の保安基準に適合した製品が登場するとみられます。

 保安基準は検討が進められており、最高20km/hの小型低速基準モードだと水色、最高6km/hの歩道走行車モードだと緑色に点滅する識別灯の装着を義務付ける案が浮上。

 このほか、車幅の小ささを考慮した段差乗り換えの性能試験なども検討されています。バッテリーや定格出力(600w以下)などの仕様も定め、形式認定も実施する予定です。

 現行の電動キックボードはこれらの保安基準を満たさないことから、特定小型原動機付自転車として使うには改造が必要となるとともに、施行後の区別、ルールの整理などが課題になりそうです。

(「くるまのニュース」)

 

 

ただでさえ「自転車通行可能な歩道」は、歩く人だけでなく、ベビーカー、手押し車を使って歩く高齢者などさまざまな方向からさまざまな速度で歩く歩行者の間を縫うように自転車や電動自転車が通行しているので、四方八方に注意をしながらよろけるように歩いています。

 

この「実証実験」に、歩行者は参加していたのでしょうか。

 

電動自転車以上にスピードも出るのに歩道も車道も走ることができ、ヘルメットも不要、さらに道路交通法を勉強しなくても乗ることができる安全性というのは、どういう「実証実験」から導かれるのでしょう。

人命に直結する話なのに、なんだか煙に巻かれたような話ですね。

 

 

道路上のちょっとした段差につまづいて電動キックボードから吹き飛び、そばを歩いている人に直撃した動画を見てしまったら、たとえケガがなかったとしても私には重大なアクシンデントが想定できそうなインシデントに見えますね。

 

インシデントを認め、報告することで積み重ねられてきたリスクマネージメントの歴史ですが、そこで求められてきた安全性とは違う世界が「実証実験」という言葉に感じるのは気のせいでしょうか。

 

 

 

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