観察する 76 世界的な感染症というのは温度差がでてくる

「未曾有の」というのは今までにこのような状況を体験したことがないために、どのように対応したら良いのか参考になる前例がない状況ですね。とりわけ感染症への対応というのは、その原因特定から対応まで手探りで進むしかない中、それぞれの状況に合わせた正確な判断が求められていく過程を目の当たりにした3年間でした。

 

そして最初の判断も適切な対応方法もそれぞれの国や地域の状況で大きく異なり、世界共通の検査法や治療法がある程度わかってきた段階で結果に差が出てくることも目の当たりにしているこの頃です。

2020年3月の「英国全体でのコロナウイルスの感染はある程度許容するが」という判断が、夏頃からイギリスや海外ではもうコロナは終わっているではないかと見える国々だったことを思い出しています。

 

文化も医療体制も違うので簡単には言い切れないけれど、社会での感染をある程度許容した国の死亡者数は凄まじいが、現在は感染が落ち着いている。

日本はできるだけ一人でも感染しないように緩やかな行動制限でワクチン接種までつなぎ、現在は死亡者数は格段に少ないけれどまだまだ感染が起こりやすい。

 

今はどちらが正解とも言えないところが「未曾有の状況」なので、たしかに海外のマスクを外してワイワイと楽しそうに見える生活に「日本は遅れている」と言いたくなるかもしれませんね。

でも、ちょっと違うなあ、「なぜ?」と聞かれたら医療従事者としてどう説明したらいいのだろうとモヤモヤしていました。

 

*よそはよそ、うちはうち*

 

そんな時に、「日本に住む4人に1人、沖縄県の2人に1人はすでに新型コロナに感染している 抗体検査からわかることは?」(忽那賢志氏、YAHOO!JAPANニュース、2022年12月3日)を読み、頭の中が整理されました。

 

恥ずかしながら、定期的な抗体調査の5回目まで行われていることも失念していました。

データーは大事ですね。

 

「日本の26.5%の人が過去に新型コロナに感染している」のに対してイギリスでは「人口の8割がすでに新型コロナに感染した」ことが書かれていました。

ではこの抗体陽性率は海外と比べるとどれくらいの状況なのでしょうか?

例として、定期的に抗体陽性率が報告されているイギリスと比較してみましよう。

イギリスでも献血者の抗体陽性率が定期的に調査されていますが、現在のイギリスのN抗体の陽性率は8割を越えています。

これはつまり、イギリスの人口の8割がすでに新型コロナに感染したことを意味しており、またオミクロン株が広がってから20%から80%に上昇していることから、大半はオミクロン株の流行以降に感染していることになります。

 

「ハイブリット免疫」も初めて知りました。

イギリスの場合は、S抗体の陽性率も2021年半ばには90%を超えており、ほとんどの方がワクチン接種をしており、さらに8割の人が感染していることになります。

ワクチン接種した人が感染した場合、ハイブリット免疫と呼ばれるより強力な免疫が得られると考えられています。

イギリスは現在、このハイブリット免疫を持つ人が多くなっている状況であり、マスクをつけている人が少なくても感染が広がりにくい状況にあると考えられます。

日本がこの状況に至までにはまだ時間がかかりそうです。

と言っても、イギリスも無傷でこの状況に至ったわけではありません。

イギリスと日本における人口あたりの新型コロナによる死亡者数は、およそ8倍です。

イギリスの方が、日本よりも多大な被害を被っていることになります。

日本がこれから、被害を最小限にしつつハイブリット免疫を持つ人を増やすのは至難の技と考えられますが、そのためには「急激な感染者の増加を生まない(できる限り小規模な流行に留める)」「重症化リスクの高い人がワクチン接種をアップデートした状態を保つ」ということが重要になります。

海外のコロナは以前に戻ったかのような状況を見るとついつい羨ましいと思ってしまいますが、よそはよそ、うちはうち、ということで日本に合ったペースでの緩和を進めていくことが重要かと思います。

 

先日、国会中継で、「世界はマスクをはずしている。首相も海外でははずしていたではないか。なぜ今ここではマスクをしているのか」と首相に詰問している議員さんがいました。

首相も「それぞれの国状況で」とは答えたものの、ハイブリット免疫をキリッと説明できたら良かったのかもしれませんね。

 

よそはよそ、うちはうち。

次の未曾有の感染症拡大のために覚えておいた方が良い教訓だと思いました。

 

 

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