ケアとは何か 24 未曾有時の日常生活援助

9年前に「未曾有の」という言葉が現実に使われるようになって、正直なところ「今を乗り越えれば私の残りの人生でこの言葉を耳にすることはないだろう」と思っていました。

ところが昨年秋には房総半島全体に甚大な水害が起き、「さすがに今年はもうこんな水害はないだろう」と思っていたら、1ヶ月もたたないうちに一晩の雨がさらに広範囲な地域に被害をもたらしていました。

そしてさらにまさかのこの新型コロナウイルス感染症の感染拡大です。

 

私の記憶の中でもここまで日常から非日常、そして日常へと目まぐるしく変化した時期はありませんでした。

 

 

*「高齢者の保護」と対応が明文化されているイギリス*

 

各国からの凄まじい医療現場の状況を目にする中で、「英国でのコロナウイルス感染爆発と全土封鎖、NHSナイチンゲール設立の意味」(小野昌弘氏、2020年3月28日、YAHOO!ニュース)の記事の以下の部分が印象に残りました。

英戦略の基本ー高齢者の保護

また同様に、ウイルス弱者である高齢者などのケアに当たる施設でも、免疫成立した人を同定できれば、同様に、仕事のシフトを改善し負荷を軽減し、利用者のこともより効率的に守ることができる可能性がある。

 

英国の政策の根幹的な方針は、英国全体でのコロナウイルスの感染はある程度許容するが、感染流行中は可能な限り高齢者らコロナウイルス弱者をそのあいだ社会から隔離し被害を最小化することにある。ここで大きな懸念は、どのようにコロナウイルス弱者を守るか、であった。

 

現在英政府は、4ヶ月間に渡る高齢者の完全な外出禁止を準備している。その間、ウーバーなどを利用して、無料で食事を届けるという。それ以外にも掃除や入浴などさまざまな手助けが必要な高齢者はいる。このケアをするひとにコロナウイルスに対する免疫があればより安心して任せられよう。

 

ひょっとすると、この21世紀の世界大戦における抗体検査は、前線に立てる人を選別するための徴兵検査に相当するものなのかもしれない。

 

抗体検査の議論は耳にしていましたが、その先に高齢者などのウイルス弱者へのケアという視点があったことに、さすがナイチンゲールの国だと思いました。

 

本文中でも、「日本では誤解が広がっているがフローレンス・ナイチンゲールはただの優しい看護師ではない。彼女は統計学者である。クリミア戦争時の野戦病院に出向き、兵士たちがばたばたと死んで行く中で、死因のデーターを取得した。そして戦死者の死因が創からの感染症であることをわかりやすいグラフにし、英政府を納得させ軍の衛生指針を改革したのが彼女の主たる偉業である」と書かれています。

 

それとともに、基本的欲求に対する援助というケアの基本を整理した人でもあります。

 

乳幼児とか、病気や高齢になった時だけでなく、こうした未曾有の災害時にも生活する人は皆弱者になります。

誰もが災害時にも食べるし、災害時にも排泄もしますし、清潔を維持しなければなりません。

その基本が脅かされそうになれば、誰もが必死に確保しようとすることでしょう。

 

政策に、ケア(日常生活への援助)の視点が明確にされていることがすごいですね。というよりは、人が生きるために必要な日常生活援助が政策そのものであり、それを実現させるのが政治なのですからね。

医療制度は国によって大きな違いがありますが、基本的欲求は同じ。

国が日常生活を保護しますと言ってくれれば、社会全体に相当落ち着くのではないかと思うのですけれど。

 

 

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