存在する 33 「顔写真の不備」と健康保険証

長いこと医療機関で働いてきたのに、健康保険証に対してあまりに私自身が無知だったことにいろいろと考えさせられるこの頃ですが、とりわけこのニュースにはほんと頭を殴られた気持ちでした。

 

「顔写真の不備」でマイナカード申請を却下された…障害者団体が健康保険証廃止に反対

(2023年5月18日、東京新聞

 

 現行の健康保険証を2024年秋に廃止してマイナンバーカードに一体させる政府方針に関し、関連法案の撤回を求める集会が18日、東京・永田町の衆院第二議員会館であった。全国保険医団体連合会(保団連)などの主催。

 

 集会で、全国の障害者やその家族らで構成する「障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会」(東京)の家平(いえひら)悟事務局長は「障害者は日常的に医療を必要としているのに、カードの申請自体が却下されている現実がある」と健康保険証の廃止反対を訴えた。

 

 17日に開かれた参院特別委員会の参考人質疑で家平事務局長は、却下された事例として埼玉県内の自治体の事例を紹介。「顔写真の背後に車イスのヘッドレストが映ったいたことが理由で却下されたり、全盲で病気のため黒目がない人でも、黒目が写っていないので取り直しさせられた」と報告した。

 

 また、自分の意思とは無関係に身体が動いてしまう「不随意運動」により、受診時に顔認証エラーとなるケースを紹介した。

 

 集会では法案の撤回を求める67万余の署名が参院議員らに提出された。

(強調は引用者による)

 

もっとも健康保険証が必要な状況にある方たちにこんな残酷なことが試されていたことに、思い至りませんでした。

 

「健康保険証にも顔写真をつければ身分証明にもなるし、不正防止になるのに」と簡単に考えしまっていました。

健康保険証に写真がないのは、今まではおそらく費用や手続きの煩雑さを避ける意味もあったのだと思っていましたが、もしかすると「顔写真を証明に使う」ことに深い配慮が必要な事実が積み重ねられた結果だったのではないか。

 

国民皆保険になって誰もが健康保険証を当たり前に持てるようになってわずか60年、存在の証明としても使われるようになってきた歴史はどんな考え方の積み重ねがあったのでしょう。

あまりに知らなさすぎました。

 

そして「顔写真」がなくてもその人の証明になるものにはどんな方法があるのでしょう。写真を簡単に撮れなくなる状況は誰にも可能性がありますからね。

生老病死の過程で、あんがいと人相が変わることがないのはごく限られた期間なのかもしれません。

 

 

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