簡単なことを難しくしているのではないか 15 任意から強制への理由の説明がない

今日の夕方首相の会見があるそうですが、今朝のニュースだけで従来の健康保険証廃止を見直す考えが全くないことだけがわかりました。

 

政府は、現行の健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に移行する方針を巡り、マイナ保険証の未取得者に発行する「資格確認書」の運用を見直す。「1年」を上限とする有効期間を「5年以内」に延長することなどが柱だ」。岸田首相が4日に記者会見を開き、対応策を発表する。

(「マイナ保険証移行、「資格確認書」有効期間を「5年以内」に延長へ…岸田首相きょう会見」、読売新聞、2023年8月4日5:02)

 

連日、マイナンバーカードのニュースが出るたびに数時間もしないうちに2000とか数千のコメントがつくのを読むと、最近では「任意取得だったはずなのになぜ健康保険証を廃止して義務化するのか」という意見が増えてきました。

 

そこですよね、「国民の不安」は。

 

*似ているけれど全く別物を作る手間*

 

 複数の政府関係者が明らかにした。マイナカードの相次ぐトラブルを踏まえ、国民がマイナ保険証と資格確認症のどちらも選択できる環境を整え、不安解消につなげる狙いがある。

 資格確認証は、医療保険の窓口で表示すれば、保険診療を受けることができるものだ。

新たな運用方針では、毎年の更新手続きの負担を軽減するため、健康保険組合などの保険者が最長5年の範囲で期限を設定する仕組みとするもの。

 原則として、本人の申請に基づいて交付するとしていた従来方針は修正し、受領者がマイナ保険証を保有していないすべての人に対し、申請を待たずに職種で交付できるようにする。保険診療を受けられない人がでないようにするためだ。

(同上)

 

え、従来の保険証と何が違うのか、なぜややこしいことをしなければならないのかと思いますけれど、「従来の健康保険証」と「資格証明書」は以って非なるものだと思います。

 

健康保険・厚生年金そして雇用保険を40年以上払い続けてきましたし、2000年代に入って介護保険も始まりました。

医療を受けるために膨大な借金を抱える可能性があった時代そして急激に寿命が伸びて何歳まで生きるのか、どれくらいの生活費がかかるのか予測できない時代へと変化していきました。

決して少額とはいえないこれらの社会保険料ですが、人生の予測困難なリスクに出会った時の経済的損失に備えるための相互扶助のシステムだからこそ払い続けていますし、政府や社会への信頼と契約なくしては成り立たないものです。

 

ところが、今後は「資格確認書」を出すことは「マイナンバーカードを持っていない人」という意味づけがされることになります。

それは政治的な意図があるとでも勘ぐられそうな踏み絵と同じ精神的苦痛を与えられることであり、これまで支えてきた社会保険制度が根本から変わっていくことに他ならないと思います。

 

*法律とは何か*

 

ましてや「延期したら、さらに政治不信が高まる」と、政治の失敗だと認められないとすれば何がそうさせているのでしょうか。

最近の内閣支持率の下落は、マイナンバーを巡るトラブルが原因と見られ、自民党内からも「延期すべき」との声が相次ぎ、政権幹部も一時「延期するしかない」と話していました。

これに対して「慎重論」を唱えたのが、加藤厚労相と河野デジタル担当相らでした。厚労相は周辺に「延期したら、さらに政治不信が高まる」、河野デジタル担当相も延期は法改正が伴うことから「難しい」などと慎重姿勢でした。

(「「延期したら、さらに政治不信が高まる」 健康保険証の廃止は延期しない考え、岸田首相が4日に表明へ」(日テレNEWS、2023年8月3日12:09)

 

自民党だけでなく、6月2日にマイナンバー法などを通過させた議員さんたちはどのような判断があったのか。

何を見通せなかったのか。

法律とは何なのか。

 

そのあたりの不信感がいま一触即発の雰囲気になっているような気がするのですけれど。

 

失敗を認められない、何が頑なにさせているのでしょうか。

 

 

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