10年ひとむかし 88 「富裕層を呼び込む」

ちょうどゴールデンウィークが始まる頃だったでしょうか、ニュースで「これからは海外の富裕層の観光客を呼び込む」と耳にしてなんとも複雑な思いになりました。

 

1980年代、日本も「先進国入り」したから「開発途上国」を助けるのは当然と東南アジアに出かけた時のあの経済的な意味での頑丈なカプセルを打ち破ることは容易ではないし、内側に誰かを招き入れるにも硬すぎると感じた頃から40年ほど経ったのですね。

あの頃はなんだか自分自身が開発途上国を下に見てしまっているのではないかという葛藤が常にあって、同じ時代にたまたま別のところで生まれ育っただけでこんなに人生に差が出ることを変えていかなければいけないのではないかという若者らしい正義感でした。

 

1990年代に入るとなんでまだそれほど働いていない年代でこんなに経済的に豊かな生活をしているのだろうという、ごくごく普通の給与生活では考えられない人たちが出現しました。

 

そして数年前には、自分の労働の対価に見合った「身の丈にあった生活」とは違う生活形態の人がいることに虚をつかれたのでした。

限られた給与から所得税社会保険が増額されるだけでなく二重税ともいえる消費税を取られ、物価高の中でとにかく買うものを減らしてなんとか生活レベルを維持しようという毎日なのに、あるところにはあるのですね。

さらに高齢者のなけなしのような年金からも徴取する。

本当に忍耐強く勤勉な国民からむしり取る政府は無慈悲ですね。

 

それでもあちこちを散歩すると、水田が健在だし、災害や疫病にも耐えて堅実に地域や産業を守ってきた落ち着いた街が全国各地にあります。

 

ようやく未曾有の感染症から社会が回復していく段階が見えてきた時に、よく耐えた国と国民へのねぎらいや希望が持てる話題があるとしたらなんだろうと思っていたら、「海外からの富裕層を呼び込んで観光を盛り上げる」というニュースでした。なんだかなあ、ですね。

 

 

この国は本当に何かを見失ってしまったのではないか、国の病気の時代というのがあるのだと思えてきました。

その諸悪の根源は「自分は富裕層側であるべき」という虚栄心かもしれませんね。

そして他の労働を知らないのに見下して支配し、搾取する、そんな感じでしょうか。

 

 

でも行基さんの頃からずっとそういう歴史を繰り返してきたので、そのうちに風向きも変わりますね、きっと。

 

 

 

 

 

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