水のあれこれ 305 雄物川と旭川

2016年ごろから都内近郊の河川や運河のそばを歩き始めて、その後全国の河川や湖沼、用水路や溜池を訪ねるようになって放水路が身近に感じられるようになりました。

 

2020年ごろに明治以降に造られた放水路を挙げて、「このなかでまだ訪ねたことがないのが新淀川と新雄物川」と書きました。淀川放水路はその後訪ねましたが、いつかは秋田をもう一度訪ねて雄物川のあたりを歩きたいと計画があります。

 

あちこちを歩くようになって、「放水路」と命名されていなくてもその機能を持つ川が多々あることを知りました。たとえば徳島の吉野川明治の終わりから昭和の初めにかけて人工的に整備された放水路ですね。

 

放水路と書かれていなくても近くに「旧〇〇川」があったり、取水堰があったり、それがヒントになることがだいぶ見えてきました。

 

 

雄物川と放水路*

 

最初は地図を眺めても「雄物川」しか名前がないし、どれが「新雄物川」で放水路なのか全くわかりませんでした。

そのうち、JR羽越線羽後牛場駅の西1.5kmほどの場所がもしかすると雄物川の旧河道かもしれないと見えてきました。

そこには細い水色の線しか描かれていないのですが、右岸側が灰色の産業地帯でおそらく旧河道を埋め立てたのではないかと想像できる場所があります。

かつての雄物川はここをぐいと北へと1kmほど蛇行し、またぐいと北西へと向きを変えJR土崎駅の近くの秋田港のあたりが河口で日本海へと流れていたのではないかと。

 

Wikipedia「雄物川」の「歴史」を読むとおおよそ正解のようでした。

かつては土崎港(秋田港)内に河口があったが、洪水防止のため大正から昭和にかけて大改修が行われ、1938年(昭和13年)に雄物川放水路が川辺郡新屋町(現在の秋田市勝平地区)に作られた。旧雄物川秋田運河となり、水位が下がって新たに生じた土地は開拓され住宅地・工業地帯となった。国道7号・国道13号(秋田北バイパス)もかつてはの水域を通っている。

 

なぜ「秋田城」が現在の秋田市の中心地から外れた場所にあるのか、謎が解けました。

 

いつか久保田城から秋田城まで旧雄物川を散策してみよう、そして放水路の雄物川河口近くも訪ねてみたい。

休暇と天候の都合が合えばいつでも出かけられるようにと、計画ができたのでした。

 

 

旭川と湿地帯と旭川治水ダム*

 

今回の秋田駅周辺の浸水のニュースで「旭川」と聞いても最初はどこかわかりませんでした。

地図で確認して、ああだから久保田城の前は旭川の方へなだらかに下っているのかと繋がりました。

 

そのうちに旭川上流ダムの緊急放流の可能性のニュースが伝えられ、どこにあるのか地図で追うと秋田駅から十数キロ北東の山あいにダムがあり、その少し下にもう一つダムのような場所が描かれて「藤倉水源地」と書かれています。

 

Wikipedia旭川(あさひかわ)の「治水」にその説明がありました。

農業用水・飲料水としても盛んに利用され、1911年(明治44年)に完成した藤倉水源地は1973年(昭和48年)に取水停止されるまで秋田市の重要な水源であった。しかし同時に度々洪水を起こす「暴れ川」としても知られており、市街地では土手が高く積み上げられた。土手は昭和20年代に道路拡幅のためほぼすべて削り取られたが、1972年(昭和47年)に旭川治水ダムが完成したことにより現在では水害は起こらなくなっている。

 

7月15日17時22分にその旭川ダムから緊急放流が行われたニュースがありました。

 

旭川治水ダムを読むと「補助治水ダムの第1号」で、リンクされている「日本ダム協会」の「旭川ダム」には「治水専用ダムであるために、普段はほとんど水が溜まっていない。洪水の際に水を貯めて洪水調整を行う」と書かれていました。

ダム湖の天堤とはまた別のようです。

 

 

*低湿地と久保田城*

 

駅前の久保田城は少し高台になっていた記憶がありますが、Wikipedia旭川の歴史を読むと周囲は低湿地だったようです。

古来、流域の村落に由来して「仁別川」「添川」「泉川」「保戸野川」などと呼ばれていた。現在は神明山(久保田城址)の北部から西部へと流れているが、築城以前には神明山東部を流れて低湿地帯を形成していた時期もあり、現在の地名または旧地名で言うところの手形・楢山字長沼・広面字赤沼など水に纏わる地名の由来になったとされている。

 

平地の少ない日本で人口が急激に増え、その一人一人が安全に暮らせるようにと葛藤してきた歴史を、川の歴史からたどることになりました。

 

まだ災害の全貌はわからないのですが、秋田市にとっては50年に一度の水害の規模あるいはそれ以上でしょうか。

 

 

 

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