水のあれこれ 320 武蔵水路の二列の水路のそばを歩く

糠田地区の氷川神社の静寂に癒され、そしてこの地域の稲作の歴史を知ることができました。

この糠田地区は実際に歩いてみると少し離れ小島のような微高地に見えます。堤防の途中の川にあった湛水防除施設の水門のあたりまで北から東側は低地の水田地帯に囲まれ、西側は荒川の河川敷です。

そのためか古くからの住宅だけでなく、ここ20~30年ぐらいの間に開発されたように見える住宅地が氷川神社のそばにありました。

 

その住宅地のそばを抜けて再び荒川の堤防へと進むと、大きな建物が見えてきました。

地図では武蔵水路との合流部の手前に広い水色に描かれた場所がありますが、そのあたりです。

利根川から取水された水がまっすぐ二列になって、北から轟々と流れていました。

大きな水門に「武蔵水路 糠田樋管 水資源機構」と表示がありますが、どんな施設なのでしょう。

 

東側には糠田地区の広大な水田が広がっていました。

真っ青な夏空に、どこまでも青々と稲が見えます。これを見たかったのでした。

ここから武蔵水路沿いにJR北鴻巣駅まで歩いて帰る計画です。暑さと歩き続けて疲れが溜まってきました。この稲穂を見ていれば歩ききることができそうと思っていたら、荒川と武蔵水路のためでしょうか、またまた想定外の川風の強さでした。

それでも楽しみの散歩なので耐えられますが、この川風の中での農作業や水路を守る仕事というのは本当に大変ですし危険な仕事ですね。ついつい川風のことを忘れてしまうのでした。

 

流域の広大な田畑を潤し、さらに首都圏の上水道にも利用されている武蔵水路ですから、水の流れは荒川に合流するところまでも速く、見ているだけで足がすくみそうです。

水路の岸や橋のたもとからはオレンジ色の球体が等間隔にぶら下がっており、また、網のついていない虫取り網のようなものが岸に設置されているが、これらは万が一流されたときのための救命道具である。これは当水路の流れが非常に速く、一度流されると自力で脱出するのが困難なためである。(Wikipediaより)

 

水路は頑丈な柵がずっと続いていますから歩いているだけでは簡単に落ちたりはしないのですが、管理されている方々にとっては命綱ですね。

 

 

*「老朽化に伴う改築事業」*

 

 

Wikipediaには老朽化に伴う大規模改修工事が行われたことが記されていました。

通水後35年を経て、水路沿線の地盤沈下と水路自体の損傷、そして老朽化が大きな問題になった。地盤沈下については、国道125号を潜る行田市の長野サイフォン付近、最下流鴻巣市糠田地区の区間で特に著しい。地盤沈下により、水路の沈下・変形、底板隆起や側面パネルの欠損などが発生し、このため本来ならば毎秒50立方メートルの導水機能を有していながら、毎秒40立方メートル以下の水しか導水できないという機能不全の状態に陥った。併せて耐震性の低下や不足も指摘された。大規模地震が発生し、この地域で予想されている最大震度である震度6強の揺れが生じると、水路や付帯施設に甚大な被害が発生する恐れがあり、この場合には長期の通水不能や周辺地域への被害、影響が予想された(水資源機構)。

 

いずれにせよ、武蔵水路は全面的な改修が必要な時期が来ていたため、管理者である水資源機構が改築事業を計画、全面的な改築事業を実施。2015年度(2016年3月)に事業が完了した。

 

Wikipediaに1965年通水当時の写真が掲載されていますが、現在のような二列の水路とは違っています。

その理由もここに書かれていました。

幹線水路は、従来の断面が逆台形のコンクリートライニング構造から、耐震性の高い矩形断面の鉄筋コンクリートフルーム構造へ改築された。改築区間は、中央に分離壁が設けられた狭い水路が2本並行したような構造になっている。これは、メンテナンスを行うときに片方の水路のみを止水し、もう片方の水路は通水したままにしておくことで、メンテナンス中の通水を確保するためである。

 

初めて武蔵水路を見た時から印象にあった二列の水路の理由がわかりました。以前からWikipediaに書かれていたのに読み飛ばしていたのですけれど。

 

あれだけの水が流れる水路を維持し、さまざまなリスクにも備えて管理するというのはどういう知識と技術が必要なのでしょうか。

すごい世界ですね。

もう少し早く武蔵水路に関心を持っていたら、この改築工事の現場を見に行ったのに残念でした。

 

 

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