目から鱗  19 「江戸時代に海域を失ってから」

これまで何度か、瀬戸大橋線の車窓から妹尾駅のあたりを見ました。

早島の 16世紀ごろからの干拓茶屋町の17世紀からの干拓による水田が南側にひらけている壮大な風景から、妹尾駅のあたりになると住宅地や駐輪場の風景なので比較的新しいベッドタウンかと思っていました。

 

今回足守川沿いに妹尾へ歩き、湛井十二ヶ郷用水の歴史を重ね合わせてみることでもう少しこの地域を知りたくなりました。

 

江戸時代には妹尾知行所の陣屋が置かれ、その陣屋町として、また金比羅往来沿線の在郷町として繁栄した。

Wikipedia「妹尾」)

 

「概要」にはこんな説明がありました。

江戸時代に海域を失ってからは、イグサの一大生産地のひとつとなり、同時に花筵・畳表・ゴザなどのイグサ加工製品も主要産物とした。これは昭和中期まで続くも、岡山市近郊のベッドタウンとして住宅造成が盛んに行われたことにより農地が激減し、イグサ関連産業は衰退の一途を辿り、逆に人口は激増した。これに伴い、近郊型商店が出店するようになる。また、機械類や食料品の生産業者も増加した。

 

ああ、そうですね、「干拓」によって漁業などはどうなるのだろうと気になっていましたが「海域を失う」と言い換えられるのだとハッとしました。

 

 

*海域を失った歴史*

 

「歴史」に、その変遷がまとめられていました。

元は島嶼であった早島丘陵の南東にあった、吉備穴海に面する古い海浜の漁業集落であった。古代には備中国都宇郡撫河郡の一部であったといわれる。その後、島嶼は陸続きとなるものも、当地は沿岸部として存続し漁業が続けられた。源平時代には、妹尾太郎兼康が平清盛に信頼を得て、三備地方の管領となったとき、当地の須浜の丘に居館を設け、瀬戸内海における平氏方の有力な拠点をつくった。また、当地の北部の海域を開発(現在の福田地区あたり。古くは福田も妹尾の一部であった)し、当時は現総社市湛井付近で東西にわかれた高梁川の、その東派川が当地の北部あたりで海に出ていたのを利用して、灌漑用水を整備(のちの十二箇郷用水の基礎)した。妹尾氏の特に殖産における功績により、妹尾氏の姓が当地の地名として残ったともいわれる(諸説あり)。

 

江戸時代になると、高松に陣屋を構えた、宇喜多氏元家臣の旗本花房氏の所領(高松知行所)となった。ついで庭瀬藩戸川氏の分家にあたる旗本戸川氏の所領(4500石)に移り、当地に陣屋が設けられ、領地(妹尾知行所)の支配が行われた。当地は東磯と西磯に分けられ、当地を通過した街道の金比羅往来周辺に陣屋町を形成した。東磯には和田一丁目・児島町・城本町・旧屋敷・畑中町・峯谷町・中村町・仁王町・八千寺町、また西磯には白浜町・大前町・抱屋町・同前町・中前町・南之町・角田町などの町筋があった。その北部には大倉・高尾などの集落があった。石高は妹尾東磯・西磯あわせて1330石、東磯・西磯のどちらも大庄屋が・年寄りが存在した。

 

この辺りが干拓され始めた、「海域を失った」のが19世紀に入ってからのようです。

文政2~6年にかけて妹尾南面の海域一帯が干拓されて興除新田が造成されると、海を失ったことにより、今まで水産にたずさわっていた妹尾住民の生業に大きな変動を来した。多くの漁業水産者は農家に転身し、残った水産者は狭くなった児島湾(かつての吉備穴海)に漁業権を持ち、一部近郊農家の顧客等によって栄え、後世に及んだ。農家に転身したものは、米の他、イグサの栽培が盛んとなった(詳細後述)。

文政年間(1818~1831)、どんな社会の雰囲気だったのでしょう。

 

明治になると、明治9年10月31日に妹尾東磯・妹尾西磯を統合して単一の妹尾村とし、同22年に町村制施行を受けて行政村としての妹尾村を設置。同29年2月26日には町制以降して妹尾町に改称。(以下略)

明治43年には国鉄宇野線が開通。当地に妹尾駅備中箕島駅が設置される予定であったが、妹尾駅は水溝を隔てた南隣の児島郡興除村東畦の地に置かれた。しかし当地との境界地であり、妹尾市街に近い位置であったため妹尾駅の名称が用いられ、利用者の多くも当地住民であった。

 

妹尾駅の東側に東畦(ひがしうね)地区があり、水田が整然と、そして水路はかなり複雑に描かれていますが、ほんの200年前は海だったようです。

 

そしてその南側が藤田地区で、妹尾川のほとりに2021年に訪ねた「児島湾干拓の守護神」である藤田神社がありました。

 

2018年に児島湾干拓地を歩き始めてから、この地域の地図が少しずつ年代ごとの変化や歴史を重ね合わせて重層的に見えるようになってきました。

 

今度は「海域を失う」という視点でも歩いてみようと、また計画ができました。

どんな歴史と出会うでしょうか。

 

 

 

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