ニュースはどのように取捨選択されるのだろう

新聞を読まなくなってどれくらいたったでしょうか。
新聞だけでなくテレビのニュース番組も、あるいはネットのニュースもほとんど目にしません。


新聞を読まないとリテラシーが身につかないとか、受験に不利といった半ば強迫観念のようなものがあって、とにかく端から端まで目を通す習慣がついたのが中学生か高校生の頃でした。


たしかに幅広く社会に目を向ける機会になりますし、休刊日はとてもつまらなかった記憶があります。


その私がぱたりと新聞を止めたのは、2000年代に入ってからでした。
当時、周産期医療に対する批判的な記事が多く、そういう記事を見るだけで動悸と胃痛がするほど精神的に負担になったので購読をやめたのでした。


ちょうどインターネットのサイトも充実してきて、関心のある記事だけをさっと知ることができるようになったことも幸いでした。


新聞を止めてもニュース番組を観なくても、困ることはほとんどありませんでした。
東日本大震災のような時には、さすがに粛々と情報を伝えるメデイアにとても助けられましたが。



<どのような力関係でニュースができあがるのか>


新聞やテレビのニュースを観なくなったもうひとつの理由に、「このニュースはどういう力関係があるのだろう」ということの方が、ニュースソースの重要性よりも大事な何かが透けて見えるようになって、ニュースそのものを鵜呑みにしないほうがよさそうと思うようになったからです。


たとえば、「NHKの番組はどうやって作られるのだろう」に書いたように、災害時の放送として信頼を置いているのですが、なぜかお産関係の話になると「自然なお産」あるいは開業助産師に強い影響を受けているような内容があります。
たぶん、助産師会の意向が日本の助産師の声を代弁していると勘違いされているのだろうなと、残念に思うことが何度もあります。


また、NHK以外のメデイアでも日経新聞のアドバンス助産師の記事のように、現場では必要とされていないものが話題性があるように報道されることがあります。


ニュースには何かと力関係が影響しているのだろうと見えてくると、むしろニュースにならない日常にもっと大事な問題点があるのではないかと考えるようになるものです。


<何を伝えたいのだろうか>


さて、前置きが長くなりましたが今日の記事の本題はここらかです。
M3という医療ニュースサイトにこんな記事がありました。

「赤ちゃんに優しい病院」に済生会兵庫県病院 ユニセフなど認定
2015年8月19日(水)配信 神戸新聞


 済生会兵庫病院(神戸市北区)が、国連児童基金ユニセフ)と世界保健機関(WHO)が認定する「赤ちゃんにやさしい病院」に選ばれた。母乳育児の推進を中心に、母子の健全な成長を支えようと行ってきた取り組みが評価された。関係者は「今後は地域の拠点として、活動の幅をひろげていきたい」と話している。


 1989年、ユニセフとWHOが「全ての妊婦に母乳育児の良い点とその方法をよく知らせる」など母乳育児の保護・促進を呼びかける「母乳育児成功のための10か条」を制定。実践する産科施設を「Baby Friendly Hospital(BFH 赤ちゃんに優しい病院)」として認定してきた。世界134カ国で約1万5千施設、日本国内では8月18日現在72施設が認定されている。兵庫県ではパルモア病院(神戸市中央区)、加古川市民病院、国立病院機構神戸医療センター(神戸市須磨区)、赤穂市民病院に続き、済生会兵庫県病院が5番目。


 同病院は2001年、産科・小児科を備え、周産期の高度な医療を提供できる地域周産期母子医療センターの認定を受けた。05年には院独自の「母乳育児支援委員会」を発足。産婦人科の病床数を増やし、産婦人科・小児科が協力して妊娠、出産、退院後を継続的に母子の健康を支えて来た。


 「母乳がでにくい人もいる。何が何でも母乳を、というのではなく、母親の意見を尊重しながら潜在能力を最大限発揮できるよう手助けをするのがわれわれの役目」助産師主任の伊藤直美さん(47)。入院中の母親におっぱいの吸わせ方などを指導するほか、退院後も母乳外来での相談や家庭訪問を行い、バックアップしている


 地域周産期母子医療センター長の狐塚善樹副院長(64)は「母乳育児を軸に母子関係を見直すことで、児童虐待の防止・早期発見にもつながっていく」と説明。「今後は保健所などとも協力して勉強会などを開き、地域に活動の輪を広げていきたい」と話している。


母乳にこだわらせるあまりに赤ちゃんの成長・発達に影響を与えてしまうことも母子関係に大きな影響を与えてしまうわけで、ようやくそういう視点が声になりだしたのではないかと思います。


「何がなんでも母乳を、というのではなく母親の意見を尊重しながら」「入院中の母親におっぱいの吸わせ方を指導するほか、退院後も母乳外来での相談や家庭訪問を行い、バックアップしている」
それは産科施設として当然、多くのところが実践してきたのではないかと思います。
そういう施設はあえて「赤ちゃんに優しい病院」と名乗る必要を感じないだけで。


だからBFHをとろうとする施設が少ないのではないでしょうか。
それにしても、兵庫県内だけでその72施設のうち5施設もあるのですね。


そして「(母親の)潜在能力を最大限発揮できるように」と受け止めているのは、やはり母乳で育てることは母親の努力にかかっているという理解なのかもしれませんね。
「赤ちゃんに優しい」といいつつ、その新生児がどのように変化しているかさえ注目されず、育児は母乳から始まるかのように。


このニュースは誰のためのニュースなのでしょうか。