「授乳・離乳の支援ガイド」のあれこれ 1 授乳の支援とは

2007年に出された「授乳・離乳の支援ガイド」の改訂のニュースがありました。

検索すると2018年11月17日に日本医事新報社が、改訂のための研究会開催について報道していました。

「授乳・離乳の支援ガイド」改訂の検討に着手ー厚労省研究会

 

厚生労働省の「『授乳・離乳の支援ガイド』改訂に関する研究会」(座長=五十嵐隆:国立成育医療センター理事長)の初会合が開かれ、妊産婦や子どもに関わる医療従事者向けの支援ガイドについて、2007年に策定された現行版からの見直し作業を開始した。同省は年度内をメドに議論を取りまとめ、自治体と医療機関に周知する方針。五十嵐座長は、医療的ケアを要する人の増加や若年層の経済的貧困率の高まりなどを指摘し、新たなガイドに反映する必要があるとの考えを示した。

 

会合では、乳幼児の栄養管理に関する厚生労働省研究班の代表者を務めた楠田聡氏(杏林大学客員教授)が、最新の知見に基づき、ガイド改訂への提言を行なった

 

母乳栄養によるアレルギー疾患の予防効果については「明確なエビデンスはない」とし、乳蛋白質調製粉乳やペプチドミルクがアレルギーを予防するといった指導は「避けなければならない」とした。妊産婦や授乳婦が児のアレルギー予防のために食事を変更しなければならないとの説に対しても「証拠はない」と断じた。

 

また、母乳の利点を啓発することは「肝要である」としつつ、母乳の良さを強調するあまり養育者を追い詰めることのないよう配慮を求めた。

 

 

また同社の2019年3月16日の「『授乳・離乳の支援ガイド』改定案が大筋了承ー食物アレルギー予防の記述が充実」の中では、「母乳栄養児と混合栄養児の間に肥満発症の差はなく」という点や乳児用液体ミルクについても言及されていました。

 

 *授乳とは何か*

 

厚生労働省の研究会の議事録と改訂版(案)を読んでみました。

「授乳の支援に関する基本的考え方」(p.15)には、まず「授乳」の定義が書かれています。

授乳とは、乳汁(母乳又は乳児用調製粉乳及び乳児用調整液状乳、(以下「育児用ミルク」という))を子どもに与えることである。

 

ダナ・ラファエル氏が1970年代から急速に進んだ母乳主義とも言える動きを危惧し、世界各国の授乳の実情をフィールドワークした結論が、母乳哺育とは母乳以外に何も与えないで育てることとは違うということでした。

「私たちは母親がどう育てているか知らなさ過ぎる」

「途上国の実情を知らなさすぎる」

「一般の人々は第三世界の女性や子どもの状態について何の知識もないまま簡単に世間に流布している説を受け入れてしまいました」

それが調整乳反対キャンペーンと母乳推進運動を加速させました。

 

あれからおよそ40年、日本でも「乳児のための授乳の支援」という普遍的な言葉にたどり着くまで、なんと遠回りをしたことでしょうか。

 

もう一度2007年(平成19年)の「授乳・離乳の支援ガイド」を読み直してみたら、大事なことが書かれていました。

「策定のねらい」には、以下のように書かれていました。

そこで、「授乳・離乳の支援ガイド」の策定にあたっては、授乳・離乳への支援が、①授乳・離乳を通して、母子の健康の維持とともに、親子の関わりが健やかに形成されることが重要視される支援、②乳汁や離乳食といった「もの」にのみ目が向けられるのではなく、一人一人の子どもの成長・発達が尊重される支援を基本とするとともに、③妊産婦や子どもに関わる保健医療従事者において、望ましい支援のあり方に関する基本的事項の共有化が図られ、④授乳・離乳への支援が、健やかな親子関係の形成や子どもの健やかな成長・発達への支援としてより多くの場で展開されることをねらいとした。

 

そうなのです。

授乳の話は、どこかで「母乳かミルクか」の方向になりやすいのですが、目の前の新生児や乳児にあるいは親や家族にとっても、今必要な授乳方法は何か、観察に基づいたニーズを標準化してくのが私たちの役目なのですね。

 

12年前といえば、WHO/UNICEFの方針でExclusive breastfeeding(完全母乳)という厳格な定義を日本へと取り入れようとする動きが活発になっていた時代でした。

 

2007年度版とその議事録を読み返すと、そういう雰囲気を感じます。

それでもその圧力とは一線を引いて、あくまでも「授乳方法の支援」であると明確に立場を表明していたのかもしれません。

  

 

しばらく、不定期にですが、この「授乳・離乳の支援ガイド」と議事録を読んで考えたことが続きます。

 

 「授乳・離乳の支援ガイド」のあれこれ、まとめ。

2.   新生児について知らなさすぎた

3.   災害という現実が明記された

4.   新生児期を分けて考える