水のあれこれ 107 多摩川と澤乃井園

水が美味しいところには美味しいお酒があることを、子どもの頃から知っていました。

その頃から飲んでいたわけではなくて、当時住んでいた水が豊富な地域に酒造工場ができたことで、大人の会話から知ったのだと思います。

 

あちこち遠出をすると、その場所でしか買えない地酒を購入するのも楽しみの一つです。

ただ、重いので、旅の終わりまで買うのをぐっと我慢し、小さな瓶をいくつか購入しています。

家で、訪れた先の風景を思い出しながら、楽しんでいます。

 

多摩川を眺めながら澤乃井を飲む*

 

奥多摩へ行く目的にもうひとつ、沢井で下車をして澤乃井を飲むことがありました。

こちらの記事に書いたように、澤乃井で日本酒の美味しさに目覚めたのでした。

それ以前も、80年代には八海山や越乃寒梅などが人気になって、友人とカウンターで日本酒を飲んでいましたが、東京に美味しい日本酒があるなんて考えたこともなかったのでした。

その後、多摩川上流には豊富な水と酒蔵があることを知りました。

 

沢井駅を降りて急な坂道を下ると、酒蔵があります。

その坂道を降りる時に、すでに豊富な水が多摩川へ向かって流れている水音が聞こえます。

多摩川の河畔への斜面を利用して庭園があり、そこで目の前に流れる多摩川を見ながら日本酒を静かに楽しむことができます。

 

久しぶりに、あの場所で川を眺めながら澤乃井を飲みたい。

再び、坂道を降りていきました。

 

手入れされた庭園は、変わらないままでした。

その日は時々雨がぱらつく天候でしたが、多摩川から川霧が立ち昇っていて、幻想的な風景でした。

 

この澤乃井園ができて半世紀ほどのようですが、静かに風景とお酒を楽しめる場所が東京に残り続けるのも、豊富な水がもたらす恵ですね。

そして、久しぶりに訪ねても澤乃井園周辺の風景が維持されているのは、ノブレス・オブリージュの一つなのかもしれません。

 

 

 

 

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