シュールな光景 30 「つばを飛ばさない」の表現を避ける気持ち

一週間前の3月13日、蓋を開けても社会はほとんど変わりませんでしたね。

その日の夕方のテレビではかまびすしくマスクをしているかしていないかの話題を伝えていましたが、通勤の風景も変わりません。

 

驚いたのは厚生労働省のとある部署を映し出して、「マスクをするかしないかは個人の判断」と言いつつ上司らしき人が「自分が率先しないと部下は外しにくいから」「やはりマスクをしないと息もしやすくて、これが本来の姿ですね」というようなことをインタビューに答えていました。

官庁の狭い部屋で8割ぐらいの人がマスクをしていないのは、通勤中ほとんど見かけることのなかったマスクをしていない人がたまたまこの部署なのだろうかと思えるような不自然さでした。

そして他のテレビ局でも同じくこの部署のインタビューが流れていたのは、何か政府側の意向があったのでしょうか。

 

それよりは厚生労働省なのだから、「まだコロナは終息していないこと」「飛沫を飛ばさないように十分に気をつけること」「終息まではどれくらいかかるか」などを提示してくださったらよかったのに。

 

今回の件では、よほど「国民のマスク生活を終わらせた内閣」になりたかったのでしょうか。

このところ社会の雰囲気を見誤ることが多い印象ですね。

衣替えをするかのように3月13日からマスクを外す人が多いとでも思ったのでしょうか。

 

 

*飛沫を飛ばさない、自分の飛沫を他人に触れさせない*

 

さて、先週ちょっと遠出をしました。

行きは東海道新幹線を利用しました。

JR東海 列車などでのマスク着用呼びかけ13日以降取りやめへ」(NHK NEWS WEB 、2023年3月6日)というニュースがあったように「国土交通省から新型コロナウイルス感染拡大防止のためのお願い」の放送がいっさいなくなりましたが、混雑した新幹線駅構内を見てもほとんどの方がマスクをしていました。

 

帰りは北陸新幹線を利用しました。

興味深いことにJR西日本区間JR東海と同じく放送がなかったのですが、長野でJR東日本になったら「手洗いをしましょう、大きな会話や飲食の際の会話はご遠慮ください」という放送が流れました。

湘南新宿ラインでも「手洗い、咳エチケット、会話控えめのお願い」の放送がありました。

 

JR内でも微妙な温度差があるのですね。

 

このところの「コロナは終わった」かのような社会の雰囲気に、電車内での大きな話し声が復活しているし、花粉症の季節でくしゃみや咳や鼻をかむ音が増え、その手で吊り革などを触る人もいることでしょうから、JR東日本の放送は大事だと感じました。

 

コロナだけでなく他の感染症でも「飛沫を飛ばさない、飛沫を他の人に触れさせない」ことが基本ですし、そのためにマスクも良い方法だとこの3年間で社会が実感していると思いますからね。

 

 

*自分の体から出るものを汚いと思われたくない*

 

ところでお通じに良いヨーグルトといった食べ物にまで排泄の表現が使われるようになった世の中ですが、新型コロナに関しては「つばを飛ばさない」という表現を社会全体に避けるのは興味深いですね。

 

最初の頃から「夜の街」とか「会食」といった言葉で、その基本の部分が見えにくくなってしまったことも一因でしょうか。

それとも、自分の体から排泄される唾を汚いと思われたくないという気持ちが強いのでしょうか。

 

これもまた「自分は大事」「自分は万能」といった自己啓発的な生き方に影響を受けてきた人たちが、現実を直視することを避けているからではないかという気がしてきました。

 

自分の体内には不潔なものはないという壮大な妄想があるから、食品のパッケージに便通や腸内細菌と書かれても平気なのかもしれない。

 

なんだかシュールですね。

 

でもまたそういう人もごくごく一部であり、思ったよりも地に足ついた生活の社会であることがわかったこの一週間でした。

 

 

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