新たな感染症が広がり始めた時には、「非常時」として文字スーパーで必要な情報を流すのはどうだろうと思いついたのですが、緊急時の対応(NHK)では感染症の発生は「災害」には含まれないので難しいかも知れませんね。
それと、何を持って「非常時」とするか慎重にならないと、国による規制をどこまでにするかというあたりのバランスも難しそうですね。
それまでの「手洗い・咳エチケット・体調が悪い人は休む」という方向から、小中高校の一斉休校要請となったのはあまりにも唐突でつじつまが合わない印象でした。
きっとこのあたりは状況が落ち着いてからあらためて検証されて、次の機会に生かされると思いますが。
*情報を知らないことよりも、自分の解釈を変えないこと*
昨日の記事で、厚生労働省のtweetを読み直していて、風疹や麻疹、ノロウイルス、あるいは、「生、半生、加熱不足の鶏肉によるカンピロバクター食中毒が多発、『新鮮だから安全ではありません』」という注意喚起が定期的にされていることを知りました。
昨年末から周囲で水痘が散発していて緊迫感がありましたから、こういう大事な情報がもっと知られると良いのにと思います。
ただ、情報を流してもなかなか伝わらないという問題もあることでしょう。
同僚が「鳥わさを食べに行く」というので、お節介ながらカンピロバクターとギランバレー症候群の話をしたのですが、「でも新鮮だから大丈夫」といっていました!
もちろん、医療従事者だからといって全ての知識があるわけでもないし、私も「え〜そうなんだ。知らなかった」という情報がたくさんあります。
問題は、知らなかったことよりも知っていても自分の解釈を変えないことかも知れませんね。
*医療用語のニュアンスがうまく伝わらない*
整然と大事な情報を流してくださっている厚生労働省のtweetでしたが、気になった部分もありました。
たとえば昨日引用した、アルコール消毒についてです。
新型コロナウイルス感染症予防に、アルコール消毒は効果がないという情報が広がっていますが、これは誤った情報です。厚生労働省では咳エチケットや手洗い、うがいなどと並んで「アルコール消毒」を行っていただくよう皆様にお願いしています。
手洗いとアルコール消毒の優先度を考えると、院内感染標準予防対策からすれば、手洗いがまず大事になります。
もしかするとこのニュアンスがわからないと、デマ予防のための正しい知識のはずが、一般の人には「アルコールの効果>手洗い」という理解になるかもしれません。
ですから、アルコールが含まれている掃除用のウエットティッシュまで完売になるのは、こういう解釈の差ではないかと。
もうひとつは、2月12日の「マスクについてのお願い」です。
現在予防用にマスクを買われている方が多いですが、感染症の拡大を効果的に予防するには、風邪や感染症の疑いがある方々にご使用いただくのが何より重要ですので、国民の皆さまのご理解・ご協力をお願いします。
このお願いの文章は全く問題ないのですが、「代用品を使おう」にひっかかりました。
2. 使い捨てマスクがないときは代用品を使おう
ガーゼマスクや、タオルなど口を塞げるものでも飛沫(くしゃみなどの飛び散り)を防ぐ効果があります。
医療機関で「ガーゼマスク」がなぜ「使い捨てマスク」になったか。そのニュアンスが伝わらないと、「手作りマスク」や「マスクの再利用方法」を広げてしまうことになるのかもしれません。
もちろん厚生労働省のtweetが原因という意味ではなく、本当に、ちょっとした言葉のニュアンスが伝わらないことが、こうした感染症の制御につじつまのあわなさを生み出してしまう可能性がありますね。
日頃の患者さんへの説明も、「うまく伝わっていない可能性」を常に意識する必要がありそうです。
「清潔」と「不潔」とか「滅菌」という言葉ひとつとっても、非常時というのは混乱するものだとわかりました。
「つじつまのあれこれ」まとめはこちら。