行間を読む 89 芸備線の脱線事故のニュース

ただひたすら川と海をみる〜岡山・広島編〜の目的のひとつは、芸備線全線に乗ることがありました。

航空写真で見ると、中国山地を横断するように、山あいのわずかの場所を線路が通っています。

だいたいが川沿いなので、もしかしたら昔はこの小さな川沿いに歩くことが他の地域へ行くには確実で近道だったのだろうか、そんなことを想像していました。

 

芸備線の「運行形態」によれば、「1980年代頃までは、陰陽連絡線として多くの急行列車で賑わっていた」とあります。

2018年度の「平均通過人員」を見ると、「東城-備後落合」のように「9人/日」という区間もあります。

 

訪ねる前にこの東城付近を地図で確認していました。

実際に乗って見ると、新見駅からたくさん高校生が乗車したのですが、少しずつ下車して野馳(のち)駅で高校生が全て降りて、車内は5人になりました。

ここまでが岡山県で、高梁川の支流もなくなり、トンネルに入ります。トンネルを出ると広島県で、東城駅のすぐそばから江の川水系の支流の小さな流れが始まる場所です。

分水嶺」の付近ということで、目を凝らして車窓の風景を眺めていた場所でした。

 

芸備線脱線で、再び運休のニュース*

 

ぼちぼちと散歩の記録をブログに書きはじめようと思った矢先、そのあたりでの脱線事故のニュースがありました。

芸備線で列車が脱線し横転 東城ー備後八幡間で上下線各3本運休 

 

  9日午前5時50分ごろ、JR芸備線東城ー備後八幡間で、新見発備後落合行きの快速列車が線路上の土砂に乗り上げ、車両が脱線。横転した。JR西日本岡山支社によると、乗客はおらず、運転士にけがはなかった。この影響で、JR西日本岡山支社は東城- 備後落合間の上下線各3本の終日運休を決めた。また同支社はバスによる代行輸送を行なっている。

 国土交通省運輸安全委員会は同日、鉄道事故調査官2人を現地に派遣し、調査を始める。

(中国新聞 2020/3/9)

 

今回の散歩では、その東城あたりまでの間に、なぜか新見から備後落合までのiPhoneのメモの記録がなくなり、さらに帰宅してから写真のバックアップがうまくいかずと散々で記憶に頼るしかないのですが、ニュース記事に添付されていた写真を見て記憶が鮮明に蘇ってきました。

 

小さな水の流れが少しずつ川幅を広げて急流の相を呈してくる深い山あいのあたりで、線路は川ぎりぎりのところにありました。

歩行と同じくらいの速度ではないかと思うほど、ゆっくりとそこを通過していきました。

運転席のそばに座っていたのですが、微妙に速度を調節している様子が見え、ゆっくりなのに緊迫感を感じた区間でした。

 

たぶん、あのあたりだろうと思います。

私が乗っていた時には、東城駅で一人降りたので乗客は4名でした。

運転士さんが無事で、本当に何よりでした。

 

1910年代から少しずつこの中国山地で各地の鉄道ができ始め、つながりあいながら芸備線になり、そして車社会になって乗客が減っても残っているのは、外から見ただけではわからない鉄道への思いがあるのかもしれませんね。

 

とにかく見て歩くと東南アジアを歩いていらっしゃった鶴見良行氏と同じくらいの年代になったのだと、ふと思い出したのでした。

 

 

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