散歩をする 331 津山線と二つの川の風景

美観地区を歩こうと思いついて早朝に出発したら少し早く駅に着き、倉敷駅からは予定より一本早い7時19分の岡山駅行きの列車に乗りました。

 

ちょうど通勤通学時間帯で、ぎゅうぎゅうの混み具合でした。私が通勤に利用する路線は最近、リモートワークの影響か以前に比べればいくぶん混雑が緩和されているのですが、むしろそれよりも混んでいます。

しかも飛び乗ったのが弱冷房車でしたから、朝から街並を散歩したあとなのでどーっと汗が出てきました。

岡山駅で吐き出されるようにホームに出てやれやれです。でも日本各地、いろいろな通勤風景を見るのも散歩の醍醐味ですからね。

 

いよいよ、昨日も乗ったローズレッドの車体の津山線に乗って、津山までの車窓の散歩です。

と書いたのですが、Wikipediaを読むとこれは朱色5号だそうで、「柿色」とも呼ばれると書かれていました。

 

 

*二つの水系を走る*

 

岡山駅からしばらくは旭川沿いに沿って走ります。

前日訪ねた法界院駅を過ぎると旭川右岸側に水田地帯が広がり、その次の玉柏駅を過ぎると、旭川沿いギリギリのところを川の蛇行に沿って走る風景に変わりました。

対岸に石積みの堤防が見えました。わずかの平地に水田がつくられ、牧山駅の付近では山に沿って美しい街が見えました。そこを過ぎると川から一旦離れて、また旭川が見えて視界がぐんと広がると野々口駅に到着し、遠いところに採掘場のような山が見えました。

 

帰宅してWikipedia津山線の歴史を読むと、「難所を避けて旭川沿いに建設された」区間だったようです。

法界院駅ー野々口間は難所の辛香峠を避け旭川沿いに建設されている。

「辛香峠」は「からこうとうげ」と読むそうで、旭川よりも西側の国道53号の通るあたりのようです。

津山線旭川ギリギリのところを通過するのを見てすごい場所に建設したと驚いたのですが、川と鉄道の歴史をまたひとつ知りました。

 

野々口駅を出るとまたしばらく旭川の美しい流れを右側の車窓に見ながら走り、金川駅に到着しました。

朝の津山線は予想以上に通勤通学の人が乗っていてどこに行くのだろうと思ったのですが、ここで多くの乗客が下車しました。「大日本印刷」の送迎バスが待機していたのですが、地図で確認すると少し戻ったところに工業団地がありました。

 

この金川には旭川旭川の支流が2本合流する場所があるので、車窓から見えるかなと楽しみにしていたのですが残念ながら見えませんでした。

ここから一旦、旭川支流沿いになり、この区間もまた水田や家並みが美しく、山には戦後植林された杉や檜と思われる木々が成長しているのが見えました。

山を越えるとまたはっとするような街並みがあらわれ、建部駅周辺では蔵と母屋が一体になった造りの家がいくつも見えました。

 

ふたたび旭川に近づき、中流なのに川幅が広くゆったりとした流れが見え、福渡駅に到着しました。

金川駅で6分停車した後は、乗客も少なく、皆さん車窓の風景は見慣れているせいか爆睡している人も増えましたが、その中で静かに勉強していた学生さんたちがこの福渡駅で一斉に降りました。

窓の外に岡山・建部医療福祉専門学校が見えました。心の中で「勉強頑張って!」とエールを送りました。

 

この福渡駅の少し先で旭川は西側へと向きを変え、津山線旭川の支流沿いに進み、小原駅の手前でこの支流からも離れます。

 

 

干拓地とは違う水田風景*

 

 

福渡駅を過ぎると、支流に沿って線路のカーブが続きながら、風景が刻々と変化していきます。

神目駅のあたりではわずかの平地に整然とつくられた水田が多かったのが、突然、棚田の風景になりました。

弓削駅のあたりではまた採掘場が見えました。魚の鴟尾のある家を見かけるようになりました。

 

誕生寺駅を過ぎると大きなため池が見え、そしてじきに小原駅に到着しました。

水道管が鉄道の上を走っている場所がありました。水源はどこなのでしょう。

地図で見直すと、旭川の小さな支流からつくられたため池で、その先の小原駅をはさんだわずか数百メートルが、岡山平野を作り出した三大河川の二つの川の分水嶺でしょうか、こんどは吉井川の支流になるようです。

 

分水嶺と思われる場所を過ぎると、下り坂になり、吉井川の支流沿いにまた水田が見え始めました。

白鷺がたくさんいます。6月下旬、田植えが終わったばかりのあぜ道に月見草が咲き始めていました。

 

魚の鴟尾と黒い瓦の家が増え、少し山陰地方を思い出すような風景になり、津山駅に到着しました。

 

 

母の記憶に残る津山は、もしかしたら倉敷周辺とは違う水田の風景や山の中を流れる川の風景、そして倉敷よりもさらに長い年月をかけて人が生活を築いてきたことをどこかに感じたからではないか。

そんなことを思いながら、念願の津山線の車窓の風景が終わりました。

 

 

 

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