今回のただひたすら川と海を見る〜岡山・広島編〜もまた、どの地域も落ち着いた歴史の積み重ねを感じる風景に圧倒されました。
なにをどこから記録に残そうかと2週間ほど考えていたのですが、散歩の日程の時系列をすっ飛ばしても、ここしかないという思いが日に日に増してきました。
昨年11月に斐伊川放水路を訪ねた時に、道路標識に「雲南」と書かれているのを見つけました。雲南というと中国の雲南省しか思い浮かばなかったので、俄然、その土地に興味を持ちました。いつか行ってみたいと地図を眺めていたら木次線と芸備線の乗り換え駅であるこの備後落合駅を知りました。
今回は通過するだけの計画でした。
*備後落合駅に停車する*
新見駅から高校生で賑やかだった芸備線も、この備後落合駅の手前からは私を含めて乗客4人だけになりました。
2人は男性で、静かに離れて座っています。「鉄」の人だということが一見してわかりました。あちらも私のことをそう思っていたかもしれませんね。「(私は川を見に来たんだから)」と、心の中で弁解していたのですが。
もう一人は女性で、この備後落合駅で下車していきました。迎えの人が来ていましたから地元の方のようです。
ここで、20分ほど停車時間がありました。
時間があったのでお手洗いに行き、駅舎の中を見てみました。1950年代ごろからの写真が飾られていて、豪雪の中、たくさんの人が蒸気機関車の周囲の除雪を行なっているものがありました。
温暖な倉敷とは違って中国山地の山の方は雪が降ることを母から聞いたことがありましたが、こんなに降っていたのかと驚く積雪量です。
そして、そこに写っている人の数の多さに、一時期は交通の要所として賑わっていたことを知りました。
*元機関士さんが守っている*
その中に、新聞の切り抜きがありました。元機関士さんがこの無人駅を守っているという記事でした。
あっと思いました。列車がついた時に一人の男性がホームにいらっしゃいました。その方です。
定年退職後も駅舎の掃除をしたり、おそらく1日に何人か降りる鉄道好きの方々を迎えているのでしょう。
そういえば、トイレは旧式のものでしたがとても綺麗に清掃されていました。手洗い場の蛇口からは、温かい水が出ていました。
ほどなく木次線が入って来ました。その中の乗客の一人と話をされているのが聞こえて来ました。この元機関士さんが何か資料を貸したようで、それを返してから芸備線の上り列車へと乗り換えていました。
下り列車は私たち3人のまま出発しました。
列車が見えなくなるまで、ホームで大きく手をふって見送ってくださっていました。
その姿に、胸が詰まったのでした。
*無人ではない無人駅*
帰宅してから改めてWikipediaの備後落合駅を読みました。
かつては準急/急行「ちどり」などの優等列車の機関車付け替え・分割併合・スイッチバックなど、運転上重要な拠点駅であったことから多くの職員がいたが、現在は優等列車の廃止とCTC化に伴い、新見駅管理の無人駅となっている。駅構内に自動券売機は設置されていないため、運賃は乗車時に車内の整理券を取り降車時に駅または車内で精算する。
かつては駅構内には機関車庫・転車台・給水塔・貯炭場が、駅に隣接して備後落合駐泊所があった。車庫と周辺にあった鉄道官舎は撤去されたが、その他の貯炭場・転車台・小さな池跡は残されている。
JR西日本の岡山支社・米子支社・広島支社の境界であるため、トロッコ列車の「奥出雲おろち号」を含め、全ての列車が当駅で折り返す。ただし、三次方面からの列車は夜間滞泊を行うため、駅舎の一部が乗務員宿泊施設となっている。利用客は列車同士の接続時に、わずかに見られる状態である。
木次線と芸備線の乗り換え駅であるものの、定期列車は三次方面1日5本、木次・新見方面はそれぞれ3本であり(木次方面は第2木曜日に一部運休あり)、各方面同士の接続もあまり考慮されていない。
当駅を含めた前後の区間は豪雨・豪雪により不通となることがしばしばある。豪雨は三次方面に、豪雪は木次・新見方面に多く、特に雪は一度深い積雪になると春まで除雪されず、バス代行となることが多い。
「歴史」を読むと、2006年(平成18)には大雨で不通になり、翌年4月まで復旧工事で運休されていたようです。
1998年(平成10)10月から無人化駅になったようですが、きっと全国あちこちの無人駅には、こうした鉄道を守る使命感を持った方々がいらっしゃるのだろうなと、最近、各地の在来線に乗る機会が増えて見えてくることがありました。
ブログはできるだけモノローグにならないように、感傷的な表現を使わないようにと自分に課しているのですが、この備後落合駅を通過した時に「元機関士さんが手を振り、見送り。胸が詰まった」と書き残したメモから、今、涙が止まらなくなっているのです。
感動とか切ないといった感情ではなく、鉄道の歴史の時間の重みという感じでしょうか、うまく表現できませんが。
ということで、今までの散歩の中で初めて泣いた記録です。
「記録のあれこれ」まとめはこちら。
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