散歩をする 344 寝太郎堰から厚狭川沿いに古開作へ

ホテルの窓から見る厚狭の街並みは、黒の屋根の街をぐるりと囲むように水田が広がった落ち着いた景色でした。

時々通過する新幹線を窓から眺めていると、ニュースでは小倉の旦過(たんが)市場について伝えていました。今回のただひたすら川と海と開作を見る散歩の最後の目的地で大きな火災が起きたのは、出かける前日でした。

 

さて、体力と気力が残っていたら厚狭川が山の間から市内に流れ込むあたりにある堰と、駅南側の排水機場のような場所がある川合のあたりまで歩いてみようという計画がありました。

いく前に地図で眺めていた時に盆地のような地形に水田地帯が広がっているので、農業用の取水堰だろうということ、そして排水させることも必要そうと想像していました。

 

結局は、長崎ちゃんめんを食べにいくだけで体力は残っていませんでした。

せっかく厚狭を訪ねたのに、宿泊するだけになりそうです。

 

翌朝、また4時半ごろから窓の外を眺めていました。

右手に明るく見えるのは小野田の工業地帯のあたりでしょうか。

4時56分、まだ通過するはずのない新幹線のトンネル出口から黄色いランプが見え始め、次第に近づき、どうやら線路を点検しているようです。初めて見ました。

日が昇ると一面のもやがかかり、街は見えなくなりました。

その間に、前日に小野田市郷土資料館で購入した資料を読んでいたら、厚狭川の堰について書かれていました。

ああ、やはり、ここを見てみたい。バスで厚狭駅から渡場バス停まで行く計画でしたが変更し、奮発してタクシーでぐるりと回ることにしました。

 

 

*寝太郎堰から厚狭川沿いを見る*

 

7時40分、朝靄はすっかりなくなり今日は天気が良くなりそうです。駅前からタクシーに乗りました。

厚狭川左岸側は少し小高い場所になって、旧市街地の雰囲気です。厚狭川に沿って堰を目指してもらいました。国道316号が厚狭川沿いに通っています。数分ほど走ると、堰が見えてきました。

以前はそのそばにも橋があったそうですが、今は流されたのか通過できないそうで、もう少し上流の橋を渡って、厚狭川右岸の水田地帯の農道を下って寝太郎堰を見ることができました。

 

運転手さんはきっと私が何を見たかったのかわからなくて戸惑ったようで、「この辺りは鴨もたくさんいて、桜の季節は美しいですよ」と教えてくださいました。

そのまま川沿いを行けば排水機場も見ることができそうでしたが、途中で、通学時間の通行禁止区間になり、国道沿いに渡場バス停に向かってもらうことにしました。

 

山の間を静かに厚狭川が流れる場所が続き、周囲の家の屋根は黒い屋根と赤茶色の屋根とあり、魚の鴟尾(しび)をつけた家を見かけるようになりました。

いつ頃から魚の鴟尾が広がったのか尋ねてみましたが、やはりわからないとのことでした。米子では石州瓦は高級なので「金持ち」と聞いたことを話すと、「この辺りでは毛利側か石見側かによって瓦の色を変えていたらしいと、NHKで言っていた」とのことでした。

ところ変われば、瓦の色の歴史もいろいろのようです。

 

厚狭川の水害の記憶を尋ねると、「洪水はすくないが土手の8割くらいまで水が上がるときもあり、その跡が土手に残っている」「何年か前、低い場所や水田が湛水して、船で重機を運んで復旧作業をしたことがある。在来線の線路沿いはまだ工事が済んでいないところもある」とのことでした。

 

こうした地元の方の記憶を知る機会になり、タクシーにして正解だったと思うことにしました。

 

 

*古開作をぐるりと回る*

 

予定よりもだいぶ早く渡場バス停に着いたので、そのまま古開作を回ってもらうことにしました。

厚狭川右岸の河口にある大きな干拓地で、「古開作バス停」を地図で見つけましたが詳しい歴史は探しきれませんでした。

 

厚陽中学校前に大きな貯水池があり、その真ん中に参道と厳島神社がありました。

通過する時に、石碑があるのを見逃しませんでした。きっと古開作の歴史が記録されていることでしょう。水を張って田植えの準備が始まった水田地帯を少しぐるりと回ったあと、貯水池に戻ってもらいました。運転手さんに少し待ってもらい、貯水池の真ん中にある石碑まで歩きました。

 

「古開作干拓記念碑」と大きく彫り込まれています。

大正10年に建てられた碑で背面に彫られた歴史を写真に撮りましたが、今、拡大してもよく読めず、「明治四年八月」の部分がかろうじてわかりました。

 

両岸の干拓地より少し高台に、住宅地が広がっています。

静かな風景でした。

 

寝太郎堰から厚狭川そして古開作まで充実のドライブが終わり、渡場でタクシーを降りました。

ここから下関までの長距離路線バスに乗る予定です。

 

 

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