米子に到着したのは6時前でしたが、すでにあたりは真っ暗です。ホテルの窓は駅に通じる大通りに面しているのですが、夜9時にはほとんど車も歩く人もなく静かでした。
翌朝5時、まだ暗いうちからまた窓の外を眺めていました。夕日が宍道湖に沈むのを見て方向感覚がおかしくなったので、どこから日が昇るのか確認しようと思いました。
5時17分、近くの家の台所に電気がつきました。車はまだまばらです。
6時になっても、この時期はまだ真っ暗です。
6時10分ごろからしらじらと夜が明け始めて、そこからは刻々と明るくなっていきました。
ふだんだったら日の出は、東西南北というより「自分の体の左側から」という感覚なのですが、米子では「右側から」薄明るくなってきたので、またまた混乱しました。
どうやら、私の方向感覚というのは幼少時からの自分と太平洋の位置関係が基準になっているのかもしれません。
*JR境線で境港へ*
ホテルを6時半に出て、6時58分発のJR境線に乗りました。終点が境港です。
境港駅のすぐそばに境水道があり、そこが斐伊川の河口ということになります。
計画の段階でぜひその辺りも見たいと思ったのですが、欲張りすぎかなと現実感がなかったのに、列車の時刻表を見て往復可能なことがわかりました。
列車に乗ったときにはまだようやく日が昇り始めた時刻だったのですが、進行方向に対して後ろに見える大山の山頂に太陽が見え始めました。
ちょうど通学時間帯で、停車するたびに次々と高校生が乗ってきていつの間にか満員です。友達と一緒に乗っているようなのに、誰一人おしゃべりもせず、本やスマホを見ていて、驚くほど静かな車内でした。
そして下車する駅に近づくと粛々と整列して降りていく様子に、大人だなあと思いました。
あの神栖のあたりのように高いところを走っているのか、海は近くてもまったく見えません。自然堤防の台地のような場所なのに、どこに水源があるのか、用水路が引かれ田畑が整然と広がっていました。長ネギが収穫の時期でした。
まっすぐな境線の線路が、米子空港のところで弧を描くように曲がり、そして終点までまっすぐで、次第に下り坂になっていきました。
終点で降りると目の前は港で、その先には対岸の島根県の半島部分がすぐそこにあります。
しばらく境水道沿いを歩いてみました。ここからロシア行きの船も出るようです。
*中海干拓地*
境水道から中海の内側へ入ったところに中海干拓地があります。
ここもぜひ見てみたいと思い、ここはためらわずタクシーを利用しました。運転手さんも中へ入ったことはないそうです。農地と農道なので無理のない程度に中を見ることができれば十分とお願いして、少し中を走ってもらいました。
想像していた水田ではなく、ねぎ畑でした。ねぎと大根が主流らしく、「昔からこの辺りはコメは取れない」とのこと。
窓を閉めていても、どこからかネギの香りが漂ってきます。
復路の列車は米子空港駅から乗ることにして、そこまで送ってもらいました。途中に、あの魚の形をした鴟尾が見えたのでこの地方の伝統なのか尋ねたのですが、運転手さんはご存知なかったようで、「そんなに古い時代ではなく最近の流行りじゃないか」とのこと。
それよりは石州瓦は高級なものなので、赤い瓦の方が「金持ち」の意味があるようなことを話していました。
米子空港駅でタクシーを降りると、空港周辺もネギの香りがしました。
列車を待つ間、飛行機が離発着するのを眺めていました。
ドクターヘリの基地が空港駅のすぐそばにあって、初めて本物を見ました。
境水道や中海干拓地をこの目で見ることができましたが、橋を渡って対岸の半島や、中海にある島へも行ってみたい。
どんな暮らしがあるのだろう。
次々と、見てみたいところが増えてしまいました。
いつかまた行けるでしょうか。
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