帝王切開について考える 3 <帝王切開術後19時間とはどのような状態か>

手術部位や麻酔方法によって術後の経過はそれぞれ違いますが、開腹手術を受けた経験がある方には、術後19時間ぐらいといえばどんな状況だったでしょうか?


まだ尿管が留置されていて、持続点滴をしています。
次第に創痛が出て来てナースコールを押しても、「まださっき使ったばかりなので、○時ごろまでは使えません」と言われて看護スタッフが鬼に見えることでしょう。


この状態で本当に歩き出せるのだろうか、トイレに自分で行けるようになるのだろうかという不安を強く感じることでしょう。
手術が無事に終わった事の安堵感よりも、「体を思うように動かせない」「痛みをどうするか」という現実問題に直面し始めるあたりではないかと思います。


手術が午前中であれば、手術後19時間と言えば早朝です。
傷みや身のおきどころのないつらさで一晩中、悶々としながらようやくうつらうつら眠れ始めた時間かもしれません。


帝王切開で無事にお産を終えたこんさんのもとに赤ちゃんが連れてこられて、元気だったはずの赤ちゃんの意識が戻らなくなったのが、帝王切開後19時間あたりだったそうです。

看護スタッフが赤ちゃんを連れて来たのは、産後19時間です。出産がAM9:30、連れて来たのが翌朝AM4:45(看護記録)、急変発見とナースコールがAM5:45です。


こんさんのこちらのコメントにその時の様子が書かれています。

私のケースは帝王切開後に側臥位で授乳させようと赤ちゃんが二の腕と胸の間に置かれたのですが、私が朦朧としてうまく授乳できなかったためそのまま看護婦さんが一旦離れ、私は暗い部屋で大泣きする赤ちゃんの頭頂部から目を離さないよう眠気と戦っていたのですが疲労が強すぎて遂に眠ってしまい、脱力した腕と胸の間に首が挟まって窒息したのが原因のようでした。看護婦さんは私も赤ちゃんも元気そうなので、ナースコールがあるまで見回りは不要と思っていたそうです。


このコメントでは「医師は鎮痛剤や睡眠不足で眠る可能性と、授乳の体勢の危険性についてやんわりフォローしてくれましたが」とあるので、こんさんの意識が朦朧としていたのは鎮痛剤の中でも点滴で使用して意識レベルも少し低下するタイプのものかもしれません。


ただその鎮痛剤を使用していなくても、帝王切開術後一晩目の早朝というのはまずほとんどのお母さんが疲労困憊して朦朧としている時間だと、経験的に思います。


帝王切開当日から翌朝まで>


「初産と経産、続き」に書いたように、初めての帝王切開の方と2回目の方では、動きやすさが全く違う印象があります。
2回目の場合、子宮収縮による後陣痛(こうじんつう)が強くなることが多いのですが、それでも手術後2〜3時間もすると自分ひとりで体の向きを変えたり、中にはテレビを観る余裕のある方もいます。


でも、こんさんのように初めての帝王切開の場合、一晩中、寝返りすら自分でうてないほど思うように体が動かせない方がほとんどです。


たくさんの帝王切開術後のお母さんたちの様子をみて、「傷みと身のおきどころのないつらさ」としか私には表現する方法がないのですが、実際に経験をされた方々はどんな言葉があるのか是非伝えてください。


帝王切開術の麻酔方法は施設やその時の状況によりますが、通常は腰椎麻酔や硬膜外麻酔で行われます。


手術室から部屋に戻って1〜2時間ぐらいすると、麻酔が切れて創痛や子宮の収縮痛を感じ始めます。
このあたりで最初の鎮痛剤を点滴や座薬で使うことが多いのではないかと思います。
「麻酔が切れて」といっても、実際にはまだ麻酔が効いていて足を動かせない状態が数時間は続きますから、その痛みは麻酔の効果を上まるほどパワフルなのか「質の違う痛み」なのだろうかと、いつも不思議に感じています。



緊張からとけ鎮痛剤も効いて、少し眠れる方もいらっしゃるようです。


数時間ぐらいすると足の運動感覚も戻ってきますから、今度は血栓予防と早期離床(りしょう)に向けてできるだけ体を動かすように言われます。


でも一人では横向きにもなれませんから、看護スタッフが体を支えて横向き(側臥位)にして背中にクッションを入れて体勢を整えます。
この時に肩と腰のあたりを支えてゆっくり動かそうとしても、「痛いから、待って!」と、少し体の向きを変えるのにも一大決心が必要なほど痛みが怖いようです。


1〜2時間ごとに、こんどは反対側や仰向けになるようにお手伝いするのですが、それさえも「このままにしておいて」と言われるほど、傷みと自分の体を思うように動かせない状況が続きます。


うつらうつらしていると、夜間になってまた創痛や後陣痛が強くなる時間帯がある印象です。


これはあくまでも私の想像の域なのですが、夜中というのは子宮収縮が強くなる時間なのかと思ってしまいます。月経や陣痛が夜中に始まることが多いような感じ。
ただ、術後は腸蠕動もそのあたりの時間から戻り出すので、それもひとつの理由でしょうか。


いずれにしても、夜中あたりにもう一度鎮痛剤を使うと、それでようやく朝方に少し深い眠りがとれるような方が多い印象です。


夜中の1〜2時ごろまでは、見回りに行くたびに目を覚ましていた術後のお母さんも、朝4時ごろになると熟睡している方がほとんどです。



「痛みと身のおきどころのなさ」だけでなく、術後1日目までは尿管カテーテル、持続点滴、生体モニター、そして血栓予防のためのフットマッサージ器などに「つながれた」状態です。
また、帝王切開術後には発汗が多くなることが多いのですが、体を拭いてもらいたくても体がままならないので気持ち悪さに耐えたり、出血が横漏れしないようにナプキンや防水シーツでますます暑苦しい状況です。


手術でなくても、この状態で一晩いたら疲労困憊するかもしれません。


少なくとも、20〜30年前の産科看護では、帝王切開術当日はお母さんの安静が最優先でした。
赤ちゃんが泣いていても、翌朝4時台に「お母さんも赤ちゃんも元気だから」と連れて行く発想はありませんでした。


いつごろから、どのように看護スタッフの意識が変化してきたのでしょうか。