存在する 7 <存在しないのに残る本籍>

青梅街道を歩いてみようと思った理由がもうひとつあります。


その街道沿いに、私の以前の本籍地があったからです。
こちらの記事で書いた、看護職の免許に関する変更届けが遅れて厚生大臣あてに謝罪の一筆を書かされた、あの本籍地です。


秋晴れの日に、街路樹に囲まれた信号にその本籍地の住所の表示を見つけました。
ようやく見届けた感じです。


たしか、高校生ぐらいの頃に初めて戸籍謄本を見た時に、なぜそこが本籍地なのか親に尋ねた記憶があります。
祖父母や親戚が住んでいる訳でもない、その場所がどうして本籍地なのかと。
両親からははっきりとした答えはありませんでした。


誰がいつ頃、どうしてこの場所を本籍地にしたのだろうという理由は、父が亡くなってしまったのでもう闇の中ですが、青梅街道の「歴史」を読んでいたらちょっとピンとくることがあって、あれこれと妄想しました。


「歴史」の中に「青梅街道最大の難所が大菩薩峠である」ことが書かれています。
大菩薩峠」に記憶が甦ったのでした。
父の本棚に、古い本がありました。それが小説の「大菩薩峠」です。
何巻かあって、ケース入りの本でしたから、当時であれば結構高い本だったのではないかと思います。


Wikipediaの説明を読むと、「1913年〜1941年に都新聞、毎日新聞、読売新聞などに連載された41巻にのぼる未完の一大巨編」とありますから、父が生まれる前から連載が始まり、陸軍幼年学校に在学する頃まで続いていたようです。
いつごろ、あの本を集め始めたのかももう知るすべもないのですが、もしかしたら、この小説がきっかけで青梅街道のどこかに本籍地を置くことを父が思いついたのではないかと。


「本籍」は、「現住所と無関係に国内ならどこに置いてもよく、変更(転籍)することもできる」わけですからね。


最近、運転免許書の本籍は表示されなくなりましたが、Wikipediaの説明を読むと「プライバシー・個人情報保護や人権全般の観点から安易に本籍地記載や戸籍抄本の提出を求めないようになってる」とあります。


最近の、助産師・看護師免許はどうなっているのかよくわかりませんが、国家資格の免許書への本籍地記入や変更届の意味はどうなのだろうというのが、長年の疑問です。


マイナンバー制度が始まった時に、一番期待したのがそのあたり本籍設定の見直しだったのですが、相変わらず「存在していないのに本籍地がある意味」という矛盾はそのままのような印象なので、ちょっとがっかり。


本籍地ってなんでしょうか。



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