相馬駅で降りて路線バスで松川浦を周り、そのあと歴史資料館と中村城を訪ねる計画です。
なぜ中村城を選んだかというと、歴史は不勉強ですが、周囲が水色の堀に囲まれていてその南側に宇多川が流れていることが目にとまり、その水を見てみたいという単純な動機でした。
ところが台風19号でその宇多川の氾濫で駅が浸水し、しばらく相馬駅が閉鎖されました。
市内では断水も起きたようです。2019年10月16日のNHKニュースでは「断水続く福島 相馬 児童生徒に飲料水配り授業再開」と伝えられていました。
こんな時に訪ねるのはどうだろうと逡巡しながらも、列車に乗ったのでした。
*松川浦へ*
相馬駅の手前で宇多川を渡りますが、それまでの景色とは一変して泥と流されてきた木などが広がっていました。
浸水した家々では、泥をかき出すために家具を外に出していました。
相馬駅はきれいになっていましたが、その周辺の道路には赤茶色の土が残っていましたし、「本日休業」の札がかかっているお店が多くみられました。
ああ、こんな時に申し訳ないなと思いながらバスターミナルに向かいました。
松川浦のそばを通ってぐるりと駅に戻る循環バスです。
出発してしばらくは道路に泥が残っていましたが、松川浦に向けて少し上り坂になり、そこからは浸水の被害はなさそうな風景に変わりました。
松川浦が見え始めました。静かな入江に漁港があって、私の好きな風景です。
本当はバスで通過するだけではなくて、一旦下車してぼーっと水面を眺めていたいのですが先を急ぎました。
原釜というバス停のそばに、伝承鎮魂祈念館があるようです。
震災の犠牲者を追悼し残されたご遺族の心のよりどころとし、東日本大震災の津波により被災した尾浜・原釜地区、磯部地区の震災前の風景を後世に伝え、来訪者の交流の場とすることを目的に建設されたもので、震災前の風景や地域の催しの写真の展示や震災当日の映像記録などが展示されています。(相馬市観光協会オフィシャルサイトより)
道路よりももう少し海側にあるので車窓からは見えませんでしたが、心の中で一礼して通過しました。
真新しい大きな相馬港のそばを通って、また泥が粉塵のように舞う市内へと戻りました。
*中村城跡へ*
水害から十日ほどたっていても、道路にはこんなに泥が残るものなのだと思うような土埃でしたが、中村城跡へ向かう道も途中からは泥がなくなりました。
城下町を思わせる水路が残り、中村城跡の堀に出ました。
小高いところに城跡と神社があるようですが、そこまで歩くと列車に間に合わなさそうなので、ぐるりと堀を歩いてみました。
目の前に城跡に合わせた大きな建物があり、市民会館と市役所でした。その駐車場に、他の県からの応援の給水車と自衛隊の災害支援の車両が停っていました。
静かで美しい落ち着いた街でした。
地図で偶然見つけた松川浦から、訪ねてみてよかったと思いました。
帰宅して数日もしないうちに、また相馬市の名前をニュースで耳にしました。
再び大雨で、今度は相馬駅の北側を流れる小泉川が氾濫危険水位に達したとのこと。
自然災害の理不尽さに、ただただ祈るしかありませんでした。
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