散歩をする 368 九州側の周防灘の干拓地を訪ねる

7月中旬、出発したのぞみの中で丹那トンネルあたりからようやく車窓に集中できるようになり、これまで歩いた場所を見逃すまいと眺め続けました。

東静岡駅の手前では大谷川放水路が分かれた後の巴川も見えました。時速二百数十キロの速度の車窓から目標点を見逃さないようにするのですから、動体視力の訓練ですね。

と、この下書きを書いてしばらく後に、静岡市内が大変なことになっていました。

 

 

あっという間に浜名湖になり、三河安城のあたりまでも今回の見逃さないポイントです。

5月の明治用水頭首工漏水のニュースのあと、田植えの遅れや渇水の可能性のニュースがありました。

矢作川を越えると一部茶色い田んぼがありましたが、他の地域でもまだ田おこしをしていたのでそのためかもしれません。三河安城付近の水田には無事に稲が育っているように見えましたが被害の全容はこれから明らかになってくるのでしょうか。

 

木曽三川の河口付近の風景を思い出し、4月に滋賀を通過した時には一面麦が青々育っていた地域も水田になって稲が育っていました。わずか3ヶ月ほどで麦の収穫から田植えまで、どのような忙しさでしょう。

いなみ野台地播磨五川伊里川の上流、そして今年4月に訪ねた山口県の開作と一瞬たりとも気を抜かずに車窓を眺め続け、10時29分に小倉駅に到着しました。

充実した4時間29分があっという間でした。

 

10分の乗り継ぎ時間ですから、小倉駅の充実した駅うどんを横目に日豊本線のホームへと向かい、10時39分発のソニック73号大分行きに乗りました。

いよいよ初めての大分県です。

 

*周防灘と干拓地*

 

4月に山口県の開作を訪ねて、それまで漠然としていた周防灘がどのあたりを指しているのかはっきりとわかりました。

 

北九州の曽根干潟大分県中津市の中津干潟、宇佐市の和間海岸などの広大な干潟が存在し、良好な環境が保たれていることが知られている。

Wikipedia「周防灘」「環境」より)

そして福岡県から大分県までの海岸沿いの干拓地が周防灘に沿ってある理由が、この干潟のようです。

昨年7月に諫早干拓資料館で見つけた「西国東干拓」が、周防灘の東端のあたりにあります。

 

最初は曽根新田から行橋、中津までの干拓地のどこかと、宇佐から豊後高田市へバスを乗り継いで国営西国東干拓地までを訪ねようと考えていました。

母が、海軍に入る叔父を見送りに大分まで行く途中で方向感覚を失ったという話は国東半島ではないかと思っていたので、ぜひ訪ねてみようと思っていました。

4日間の計画をあれこれと見直してみましたが、今回は時間が足りなさそうです。

残念ながらソニックの車窓から干拓地を眺めることにしました。

 

 

*小倉から大分までの車窓の散歩*

 

ソニックが出発し、2ヶ月前に歩いた小倉市内から城野駅の風景を懐かしく眺めていると、城野駅を過ぎたところから列車は下り始めました。やはり、西水町と東水町は分水嶺のようです。じきに周防灘に向かって平らな場所になりました。

曽根新田は住宅の向こう側のようで水田は見えないまま市街地を列車が通過し、苅田駅の前あたりからは干拓地と思われる場所に工場がありました。

 

沿線の住宅の屋根に魚の鴟尾(しび)がありました。

西日本では飛び地のようにこの魚の鴟尾のある家を見つけますが、どんな広がりがあるのでしょう。

 

工場と住宅地そしてたまに水田の風景から、一気に水田地帯になりました。

行橋(ゆくはし)駅の手前から用水路や水路、水門が増え、黒い屋根の落ち着いた行橋の街並みと水田地帯の風景です。ところどころ溜池も見えました。

 

滑走路の端にぐいと近づいたあと、向こうに周防灘が見え始め、手前に蓮が植わっているのが見えました。

築城(ついき)基地航空自衛隊ですが前身が大日本帝国海軍の基地のようなので、もしかすると母の叔父はここに入隊したのでしょうか。

 

周防灘に面した堤防が見え、豊前松江駅の手前では海ギリギリまで水田が広がっていました。

いつ頃できた水田でしょうか。

小さな漁村に、石造りの常夜燈が見えました。

また工場があり、水田地帯と黒い屋根の家がみえ、その向こうに海が広がっています。

中津を過ぎ、今津のあたりでは田植え直後の水田でした。

国東半島の両子山が見えました。あの麓をぐるりと回ってみたいものです。

あっという間に山あいに入りましたが、山間部というよりは平地が続いています。トンネルでは圏外になりました。

杵築(きつき)駅の手前では水路と家並みが美しく、このあたりも黒い屋根と美しい川と、途中下車したくなりました。

 

列車がぐいと南西へと向きを変えると、別府湾が見え、その向こうに由布岳が見えました。

初めてみる由布岳です。青い空、青い海に美しい山の姿でした。

 

別府駅の手前で、中津の救急車が走っているのが見えました。

だいぶ遠いところからの搬送ですが、別府医療センター九州大学別府病院でしょうか。

ここまでの大分県内の沿線には産科のある病院がなさそうでしたから、もしかすると周産期の救急搬送かもしれないと、ちょっと仕事モードになりました。

 

別府湾に沿ってぐいぐいと向きを変えながら、ソニックは12時28分大分駅に到着しました。

 

 

 

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