記録のあれこれ 58 「続・秘蔵カラー写真で味わう 60年前の東京・日本」

時々、ふらりと書店に出かけると求めていた本との出会いがあります。

 

表紙は、線路に停車している新幹線にたくさんの人が詰め掛けて眺めている写真が使われている本で、2019年12月30日に出版された直後に手に取りました。

 

新幹線なのに周囲に柵や壁があるわけでもなく、地面にレールが直接敷かれています。

新幹線というと頑強な高架で、在来線のように地面に直接線路が敷かれていることはないイメージなので、初期の頃はこんな感じだったのかとちょっと驚きました。最近は、秋田新幹線山形新幹線のようなミニ新幹線があることを知りましたが。

 

当時の新幹線のあの丸鼻の姿は、私にとってはすでにセピア色の記憶になっています。

ところがその本の表紙の写真が、現在のカラー写真かと思うほど鮮明だったので、一瞬、時代と記憶が混乱したのでした。

本文でも、見開きでその新幹線の写真があり、こんなキャプションがあります。

鴨宮(神奈川県) 1963年8月14日

お盆の時期に公開された新幹線。見物客が奥の方までぎっしり。

新幹線は1964年10月1日に開業していますから、それよりもさらに1年前の写真だったようです。

美しいカラー写真です。

 

それ以外も、私が生まれる少し前から幼児の頃までの東京や全国あちこちの街の風景や鉄道のカラー写真が載っていて、「ああ、そうだ。こんな感じだった」と懐かしくながめています。

あまりにそのカラー写真が美しいので、白黒写真に色付けしたものかと思いました。

 

ジェイ・ウオーリー・ヒギンズ氏の「略歴」によると、当時からカラーフィルムを使用していたようです。

米軍勤務を活かし、1950年代より当時としては相当に高価であったカラーフィルム、それも耐変色性に優れるコダクロームで撮影を行なっていた。所蔵枚数はカラー写真だけでも6,000枚を超えている。 

 

1960年代に子どもだった頃、両親がわずかに持っていた写真をみては「すごい昔だ」と感じていました。

よくよく考えれば、それらの写真の中にも1950年代に写されたものもあり、わずか10年ほどですでにセピア色の写真になっていました。

もし、あの写真がこの本のようなカラー写真だったら、それほど時代の差を感じなかったかもしれませんね。日本ではようやく1970年代に、カラーフィルムが広がり始めたのでした。

 

色がついているだけでも、こんなにも印象が違うのかと驚きました。

60年前の都内は、銀座や赤坂などをのぞけば、渋谷や新宿、池袋などもまだ線路周辺は平屋建てかせいぜい2階の家ばかりでした。カラーでその風景を見ると、少し郊外にでた現在の風景とそれほど変わらなく感じるのも不思議です。

 

そして都内だけでなく、全国の路線の写真が載っているのですが、沿線の景色に木が少ないことがカラー写真だとよりはっきりとわかりました。

やはり日本の森林が荒廃していた時代だったようです。

 

それにしても60年以上もこうして写真を取り続けることで、貴重な記録を残すことになるのですね。

 

 

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