ケアとは何か 32 隔離と停留の日常支援

緊急事態宣言が出されて、テレビに文字スーパーで情報が表示されるようになりました。

感染症拡大は「災害」ではないという規定だったのだろうかと受け止めていたのですが、自衛隊の活動記録をみると当初から「災害派遣」としていたようです。今後は、地震や水害などだけでなく感染症拡大も災害としてみなされるかもしれませんね。

 

ただ、今までの「災害」とは違う表現が飛び交うのが感染症です。

地震や水害なら「避難」なのに、今回は「隔離」という言葉です。医療従事者だとイメージしやすいのですが、今まで無縁だった人にとっては空恐ろしいことのように感じるかもしれませんね。

 

*隔離と停留*

 

今回、自衛隊の活動記録の3月1日に書かれている「業務にあたった隊員は、業務終了次第、14日間の停留に入ります」から、初めて「停留」という言葉を知りました。

 

Wikipedia検疫に定義があります。

隔離の処置 

検疫所長は検疫法第2条1号・2号に掲げる感染症患者を隔離し、また、検疫官に感染症患者を隔離させることができる(検疫法第14条1項1号)。日本の検疫法上の隔離のそちは、すでに検疫感染症にかかっていることが明らかとなった患者を対象とする措置である。

 隔離される医療機関、隔離の措置の解除なども法律で規定されていて、「隔離措置の継続中に逃げ出した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処される」とあります。

 

それに対して「停留」は以下のように説明されています。

停留の処置 

検疫所長は外国で検疫法第2条1号・2号に掲げる感染症が発生し、その病原体が国内に侵入し、国民の生活および健康に重大な影響を与えるおそれがあると認めるときには、検疫法第2条1号・2号に掲げる感染症の病原体に感染したおそれのある者を停留し、また、検疫官に感染したおそれのある者を停留させることができる(検疫法第14条1項2号)。日本の検疫法上の停留の措置は、検疫感染症に感染しているおそれのある者を対象とする措置である。

 「停留される医療機関」で、以下のように書かれています。

ただし、緊急その他やむを得ない理由があるときは、これら以外の病院・診療所で検疫所長が適当と認めるものにその入院を委託し、また、船長の同意を得て船舶内に収容して行うことができる。 

 

ダイアモンド・プリンセス号での検疫もこの停留にあたるのですね。 

業務にあたられた自衛官は、おそらく駐屯地か自衛隊の病院で停留されたのではないかと思われます。

そして今回市ヶ谷のホテルで帰国者を収容したのも、この検疫法の停留にあたるのでしょうか。

 

*2〜3週間、日常生活を規制されるということ*

 

この停留でも「停留措置の継続中に逃げ出した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処される(検疫法第35条2号)」という罰則規定があるようです。

皆、海外へ気軽に出かける時代になりましたが、こういう可能性を考えて出かける人はまずいないことでしょう。

 

正直なところ、アフリカや東南アジアなど感染症の多い地域に行っていた私も、検疫での罰則規定までは考えていませんでした。

ただ、もし帰国後に症状が出たときには2週間ぐらい仕事ができなくなる可能性は考えて出かけていました。

 

入院すれば食事や治療は問題ないのですが、感染症病棟だと洗濯や買い物などの細々とした日常生活に必要なことはどうするか、長期になれば経済的なことをどうするかなど漠然とした不安はありましたが、まあ怖いもの知らずの年代でしたからね。

 

病気が怖いというよりは、日常生活が途切れることの不安というのはかなり大きいものがあるかもしれません。

 

ところで、罰則規定まである「停留」ですが、刑務所のようなイメージでもないことが4月11日の防衛省自衛隊tweetでわかりました。

グランドヒル市ヶ谷では、食事の配布を1クルー=5名の4クルー体制でホテル従業員と委託会社が連携して実施しています。チームリーダーは、本部との連絡のために市販のハンデイ無線機を携行し、安全確保に努めています。また、食事もできる限りのご要望に対応しています。 

 

感染の恐怖もあることでしょうに、それでも他の人の日常生活をできるだけ快適にしようという思いがある方々が働いていらっしゃるのですね。

これもまたケアであり、地の塩という言葉を思い出したのでした。

 

 

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