あちこちを散歩していると、真っ黒な瓦と黒や白のはっきりした壁の家々や茶色を基調にした家、あるいは木肌に黒い炭で模様をつけたような壁などに、思わず惹きつけられています。
この季節の、新緑に田植えの始まった水田とそうした家々が重なり合う風景は息をのむほど美しく、そしてどの季節の変化にも合って落ち着いた風景です。
また意外だった秋田郊外の北欧調の鮮やかな明るい色の壁も、案外と日本の風景に溶け込むものですね。
1970年代に憧れていたインテリア雑誌の中の北欧調の街並みが、半世紀ほど後の日本の各地でみることになるとは想像もしていませんでした。
*扉への気持ちの変化*
北欧調の家に憧れていたもうひとつの理由が、ドアでした。
それまで住んでいた家は、60年代前半に2年ほど住んだ真新しい集合住宅の官舎をのぞいて、すべての家の玄関が木の引き戸、部屋もふすまの引き戸でした。
高校生の時に両親が初めて建てた一戸建てに移った時も、私の部屋はドアノブがついた開き戸だったのですが、玄関は相変わらずの引き戸式だったことで、実はとてもがっかりしていました。
重い木の開き戸で、ドアノブについた鍵をカチャリと閉めることに憧れていたのでした。
今は当たり前のように毎日、あの憧れていた開き戸を開け閉めしてガチャリと鍵を閉めていますが、そうなるとほんと勝手なもので、今は引き戸に憧れています。
ふらりと散歩をした街で昔からの引き戸、特に格子戸が残っていると、ああこんな家に住みたいと思うのです。
半世紀もすると、人の気持ちというのはこんなにも揺れるものなのか と、扉ひとつにも感じています。
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