8月下旬にアフガニスタンで鉄砲水が発生したニュースがありました。
アフガニスタン 大雨で鉄砲水発生 少なくとも100人死亡
2020年8月26日 NHK NEWS WEB
アフガニスタンでは、大雨による鉄砲水が発生し、少なくとも100人が死亡、100人以上がけがをしていて、政府は軍の部隊を派遣して援助活動を行っています。
アフガニスタン政府によりますと、首都カブールの北にあるパルワン州で26日未明、大雨が降った影響で、鉄砲水が発生しました。
地元政府などによりますと、この鉄砲水で、一部の住宅が倒壊したり、押し流されたりするなどして、これまでに少なくとも100人が死亡し、100人以上がけがをして病院で手当を受けているということです。
また、住宅およそ500棟が被災し、瓦礫の下に多くの住民が取り残されていて、犠牲者は今後、さらに増えるおそれがあるということです。
政府は、軍の舞台を現地に派遣して救助活動を行っていますが、道路が土砂に埋まり寸断されるなどの被害が出ているため、救助活動が難航することも予想されています。
現場は山岳地帯のため、今後、土砂崩れが起きる恐れもあるとして政府は、地域の住民に避難を呼びかけるなど警戒を強めています。
80年代半ばごろからアフガニスタンの状況を本や写真で知る機会が増えたので、イメージとしては森林の少ない砂漠のような地域でした。
そういう場所でも鉄砲水が起こるのかと、印象に残ったニュースでした。
水辺を守るに書いたように、80年代半ばに暮らした東南アジアの国で、雨季になると「一度の洪水で数百人がなくなるというニュース」を耳にすることが増えて、「鉄砲水」という言葉が意識に残りました。
2017年に書いたその記事でWikipediaの鉄砲水にリンクを貼ったのですが、現時点のWikipediaの説明はだいぶ変わっていました。
鉄砲水(てっぽうみず、英語:flash flood)とは、山地や中間地の小流域などで発生する急激な出水や増水。丘陵地流域で発生することもある。ただし、鉄砲水は学術用語ではなく特定の地域で限定的に使用されていたものが1960年頃までに一般用語化したものと考えられる。
*概念の変化*
強調引用した箇所に「1960年頃までに一般用語化したものと考えられている」とありますが、80年代半ばに現地の英語のニュースで「flash flood」という単語と映像から、すぐに「鉄砲水」と思い浮かんだのでした。
当時、日本ではどれくらいの頻度で耳にする言葉だったのだろうと気になっています。
現時点のWikipediaの「語義」も興味深いことが書かれています。
鉄砲水の語源は一説によると林業で伐木を運ぶための「鉄砲堰」や「鉄砲流し」と言われている。
災害報道では1960年ごろから山津波と同義語として使用されていたが、1975年ごろからは土石流が使用されるようになり山津波や鉄砲水も同義語として使用されるようになった。その後、1991年の雲仙普賢岳 の土石流災害で土石流が広く認知されるようになったことから土石流に対して用いられることは少なくなった。鉄砲水と土石流は土砂濃度の違いにより捉えられ、特に1990年代からは山地・中間山地の河川等での突然の出水・増水の意味で用いられてきている。
たしかに「土石流」という言葉を私が意識したのは、1991年の普賢岳の映像でした。
検索すると、NHKの「集中豪雨で増水! "鉄砲水"のメカニズム」(2014年7月22日)という記事がありました。
その中で都市の川の急な増水の例として、2008年に世田谷で降った激しい雨により、わずか30分で下流の大田区の呑川の水位が1メートル70センチも上昇し、川の改修工事を行っていた男性が亡くなったことが説明されています。
あの長良川のそばでマンホールから水が吹き上がって起きた車の事故も鉄砲水といえるかもしれませんね。
2000年代に入ってゲリラ豪雨、洪水、竜巻といった新たな自然災害が増加し始め、30年ほど前は雨の多い山間部で起きるイメージだった鉄砲水が、都市部や乾燥した地域の災害でも使われる言葉になったようです。
時々、言葉の意味を思い返していかないといけなさそうですね。
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