ケアとは何か 35 生活を把握するシステムがない

新型コロナ感染の妊婦さんの状況についての記事を読んで、うらやましいと感じたのが「全国のおよそ2200の産科のクリニックや病院を対象に調査が行われた」ことでした。

 

医学的なことはこうして次々と信頼できるデーターになって、ガイドラインなどとして周知されていくことは東日本大震災と原発事故の時から目を見張るものがありました。

医学的に「現在の状況はどうか」「必要なことは何か」を、常に問いかけてくれる組織があることがすごいと思いました。

 

今回、半年ほど経っても、産科診療所にはどこからも、この感染症と生活やケアへの影響についての現状調査はないようです。

 

新型コロナウイルス感染症は妊産婦さんにどのような影響を与えているのだろう*

 

妊産婦さんのお話を聞いていて、日々、綱渡り状態だとヒヤヒヤしているのが、妊娠中や出産時・産後の手伝いの変化です。

 

里帰り分娩を取りやめたり、実家から親が来て手伝ってくれるはずだったのが取りやめになった人はかなりいます。

なんとかパートナーと乗り切るしかないという感じで、不安は大きいだろうと思います。

パートナーがリモートワークで自宅にいるから助かったという声もありますが、第二波のように家族内での感染が起きた時にどうするのだろう。

 

経産婦さんだと、出産時に上の子の世話をする人が必要ですが、今までのような、お産が近づくと実母が来て手伝ってくれるという対応ができない人が増えた印象です。

あるいは切迫早産などで、急に入院が必要になる時に上の子の対応をどうするか。

 

今までなら経済的に許せばシッターさんとか産褥ケアの利用を勧めていたのですが、感染症となると、これも躊躇します。

また経済的にも大変になった人は、どれくらいいるのでしょうか。

 

妊娠から出産まで他の人のサポートが必要になる状況を想定して準備をしてくださいね、とお話しする私たち側も、正直なところなんの手も浮かびません。

ケアを必要とする人がケアを担う状況といえる妊娠から産後の日常生活に、この未曾有の感染症はどのような影響を与えているのだろう。

 

今まで、心身の不調や家族関係で問題がある方は保健センターと連携をとっていましたが、感染症対策に追われる保健センターのスタッフの方々もまた、通常の母子保健への余力もないのではないかと思います。

 

現状はどうなのでしょうか。

何が問題点やニーズで、何が解決策なのでしょう。

 

どこからも日常生活への援助という視点での調査もこない。

誰がどうやって把握しているのだろう。

 

把握するシステムもないのに、どうやって対応策ができるのだろう。

 

あの東日本大震災からもうじき10年になるというのに、ケアのための調査をする組織さえないことを痛感しています。

症例報告を基礎としていない方法論が広がるケア(看護)がその一因ではないかと、この新型コロナウイルス感染症の対応からも感じています。

 

 

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