つじつまのあれこれ 29 感染症と医療と経済

駅のトイレにあるハンドドライヤーがまだ使用されていた時期のこと、朝、そこで若い女性が長い髪をそのくぼみに入れて乾かしていました。

・・・と書いても、すぐに状況が思い浮かべられないほど、想定外の使い方ではないかと思います。

 

なぜ、その時間に、駅のハンドドライヤーで髪の毛を乾かすのか。

その状況にはのっぴきらなない事情があったのかもしれませんが。

 

以前から、ハンドドライヤーの是非についての議論は目にしていましたからたまに使う程度でしたが、この場面を見てから私は不特定多数が使用する場所では使わないようになりました。

そしてじきに新型コロナウイルス感染拡大で、ハンドドライヤーは使用中止になりました。

 

 

*ハンドドライヤーと経団連

 

3週間ほど前、「ハンドドライヤー『使用しない』経団連 ガイドライン見直しへ」(NHK NEWS WEB  2020年11月22日)というニュースがありました。

経団連はことし5月に企業向けに公表した感染予防対策ガイドラインで「ハンドドライヤーは利用をやめ、共通のタオルを禁止し、ペーパータオルを設置するか従業員に個人用タオルを持参してもらう」と定めています。

各地で感染対策が進む中、経団連にはメーカー各社から商品の安定性を訴える意見が寄せられているほか、ドライヤーを使っている事務所からもいつまで使用をやめればいいのかという問い合わせが増えているということです。

世界的には、WHO=世界保健機関はハンドドライヤーを使用するだけでは新型コロナウイルスの感染を防ぐ効果はないとしながらも、「頻繁に手を洗いペーパータオルやハンドドライヤーで十分に乾かすべきだ」としています。

また経団連が各国の状況を調べたところ、イギリス政府やアメリカCDC=疾病対策センターガイドラインでも手洗いの後にハンドドライヤーで手を乾かすよう定めているほか、シンガポールや香港も同様だということです。

こうした状況を踏まえ、経団連は、専門家の意見も踏まえながら「ハンドドライヤーを使わない」とした記載を見直すことにしています。

 

「企業向けのガイドライン」がどのような範囲に影響を与えるのかわからないのですが、見直されたら駅や商業施設などでもハンドドライヤーが復活するのでしょうか。

 

それに対して厚生労働省の見解が書かれています。

ハンドドライヤーの使用について厚生労働省は、「洗い残ったウイルスが飛沫と一緒に飛散するという専門家からの指摘はあるが、十分な手洗いをすることで感染のリスクを下げることはできる」としています。

ちょっと目を疑いました。「時期尚早」と止めるものだと思っていました。

 

ハンドドライヤーにもさまざまあって、場所によっては洗面台の内側に取り付けられたタイプもあります。

不特定多数が手を洗ったり、うがいをしたり、時には吐いたりするあの洗面ボールの内側のどんな雑菌をドライヤーで吹き飛ばしているのだろうと、ちょっと驚く構造です。

 

このニュースでは「吸引するタイプの製品に注目」と書かれていますが、感染症の拡大の今の時期に使用できることをどのように実証したのか、冒頭のような「まさかそんなことが起こるとは」という失敗から学ぶリスクマネージメントの視点は、この製品開発にあるのでしょうか。

 

ハンドドライヤーの再開よりは、全ての洗面所に石鹸を、そしてできれば和式トイレから洋式トイレへ、そして全てのトイレに便座クリーナー設置 などをこの機会に進めてくださると良いのに。

次の50年に一度とか100年に一度の感染症拡大に備えた、大改革の良い機会だと思うのですけれど。

 

 

なんだかだいそれた今日のテーマですが、いまだに経済は苦手で生活の範囲でしか理解できないのですが、この30年ほどなんとなく感じていたことが最近、やはりそうだったのかと確信に近くなっています。

 

それは「学」とついても経済学というのは理論化のための方法論のない、仮説をそのまま社会に実験してくもので、さらに失敗が社会に対して与えたことに対して責任をどうやってとるかという仕組みがないのではないか、この経団連のつじつまの合わない発表に感じたのでした。

 

 

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