行間を読む 176 「カルト宗教」

予約していた「カルト宗教」(紀藤正樹氏、アスコム、2022年12月29日)が届きました。

 

あの日以来できるだけ情報は追っているのですが、なぜ統一教会の問題がここまで大きくなったのだろうというところで自分の理解が漠然としたままでした。

 

この本の「はじめに」を読んで謎が解けた感じです。

 日本は、カルト被害の救済に対する姿勢がなお不十分であり、途上であるというべきである。オウム真理教事件を体験した以降も、日本のカルト対策はあいかわらず貧困な状況にあり、それが現在の後を立たない日本のカルト被害の問題の原因となっている。

 実際、松本、地下鉄サリン両事件での死者だけでも20人以上、死傷者は約6千人にも上る。世界でも未曾有のこの事件について、日本は、政府として未だに総括的な調査もしていないし、報告書も作成していない。立法府である国会も特別な調査委員会すら設置していない。なぜ事件が起きたのか、そしてどうすれば今後二度と事件を起こさないですむのか、という問いに対して日本としての答えが、未だにない状態にある

(中略)

 カルト対策は、「信者収奪型」の事件にいかに向き合うかが大切である。信者の自己責任として放置しない法制をどう構築していくのか、二度とオウム事件を引き起こさないためにも、日本の未来に託された課題である。

(強調は引用者による)

 

2年ほど前に書かれた「後を絶たない『カルト被害』」というコラムの抜粋だそうです。

 

本当に地下鉄サリン事件もまた「未曾有」の事件であったというのに、私自身、感覚が麻痺したままで実行犯が逮捕され死刑執行されたあたりで終わった気分になっていました。

 

本の最初の方は「カルト」のさまざまなとらえかたについて整理できるように書かれていて、それを読むと私自身がなぜ「カルト」という視点で考え続けてこなかったのだろうというあたりが見えてきました。

その後、自己啓発セミナーとかバイブル商法とかが医療に入り込んできたことへの警戒感はあったのに。

 

自己啓発セミナーやマルチ商法のカルトから身を守るためには、やはりカルトが発する特有のサインを見逃さないことがポイントです。

具体的には「お金」「ウソ」「秘密」の3つです。

(p.42)

 

筆者が「空白の30年」と書かれていますが、私も「カルト」という言葉でとらえることを避けてきたことに大いに反省をする内容でした。無関心だったわけではなく、海外のカルトについては本も読んでいたのに対岸のことのようになってしまっていました。

大人は簡単なことが理解できずにこうした事件も小難しくしてしまったりわかった気になってしまうあたりが、空白の30年をつくってしまった原因かもしれないですね。

 

では、政府はなぜ30年も対策を放置してきたのでしょう。

似たような組織と持ちつ持たれつの関係があったという失敗を認められないからでしょうか。

 

いま取り込まれてしまっている人の自尊心を傷つけないように解放されるための方法から、これから新たに取り込まれないようにするための具体的な方法など、最初から最後まで再発防止の視点で書かれている本でした。

 

本当なら相当専門的な知識が必要な内容まで、わかりやすい言葉で書かれていました。

それはやはり現実の問題と対峙し、目の前の相手に対して使う言葉一つに大きく悩み、あるときは失敗を重ねた上で出てくる言葉だからだと思えました。

 

 

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