助産師の世界と妄想 13  <野心的研究課題>

こちらの記事で紹介した中に「野心的研究課題」という言葉がありました。

これらは野心的研究課題ではありうる。しかし現時点では根拠は希薄である。筆者らに欠けているのはデーターに対する批判的な視点である。


いやあ、あるある。
助産師の世界ってそれだ、と妙に納得した一文でした。
つまり思い込みによる、自分の求める結論への誘導ですね。


そうした野心的研究課題がきちんと批判されないから、そのまま思い込みが生き残るのかもしれません。
そして社会に生き残ってしまうと、本当に解決しなければならない大事なことが見えなくなってしまいます。


<トラウマにならないお産のヒント「院内助産」>


さてNHKの「お産トラウマ」という言葉ですが、その状態は何かという定義さえないことは昨日の記事で書きました。


これもいってみれば野心的研究課題といったところかもしれません。


定義も明確でないのに、解決策はやけに明瞭でした。

トラウマにならないお産のヒント


また病院で進められている取り組みについては、「産前・産後の説明」や「スタッフとの信頼関係を作るために、病院の中に助産師のユニットがある『院内助産システム』や、病院の中で助産師が外来を行う『助産師外来』などがあります。病院の安全性と、助産師のメンタルケアの融合が期待されます。

「妊娠経過に問題がない人」限定の院内助産、しかも分娩時にはその1割が救急対応が必要になるというのに、院内助産がお産のトラウマにならないためのヒントですか?
NHKはどういう話し合いを経て、このような番組を作ったのでしょうね。


そしてどういう「専門家」の声を取り入れたのでしょうか。


このあたりから「院内助産」について書きましたが、この「院内助産」こそが助産師の中での最大の野心的研究課題かもしれません。


「終わってみないと正常かどうかわからないお産」を「正常なお産は助産師で」ということ自体がそもそも思い込みですからね。
そして「産む力」「生まれる力」「私らしいお産」といったイメージだけの言葉に彩られた妊娠・出産子育てのイメージの世界を作り出してしまったのではないでしょうか。


思い通りにならない出産・育児のリアリティショックへの現実的な問題とその対応を、臨床という場で観察し問題提起するのが私たちの役割のはずなのですけれどね。


でもこうした野心的研究課題を続ける人たちの声の方がマスコミに近いのだと思います。




助産師の世界と妄想」まとめはこちら