1980年代の帝王切開術の看護について、教科書に書かれていた内容を前回の記事で紹介しました。
あれから30年近くたって、私の記憶では帝王切開術の看護について網羅された専門書を見た記憶がありません。
書店で現在の「産婦人科看護」あるいは「母性看護学」で使用されている教科書類にひととおり目を通してみましたが、「帝王切開術後の看護」はほんの1ページ程度でまとめられているくらいでした。
助産学生が使用している教科書は見る機会がないので、どうなのでしょうか。
日本看護協会から出版されている助産師業務要覧になると、「帝王切開術後」という見出しさえ目次にはありません。すべて「産褥期のケア」として扱われているようです。
それ以外に1999年に医学書院から出版された「臨床助産婦必携 生命と文化をふまえた支援」は助産師の業務を網羅した400ページぐらいの本ですが、その中にも帝王切開に関する記述はありません。
ここ30年ほどを振り返ると、いかに日本の助産師が「正常なお産」に力を注いで来たかがわかるようです。
ようやくここ2〜3年で、帝王切開をテーマにした雑誌がありました。
「周産期医学」(東京医学社)の2010年10月号が「特集 帝王切開ー母体と新生児に与えるインパクト」で、帝王切開に関する最近の話題が掲載されていました。
もうひとつは、「帝王切開のすべて 助産師だからこそ知っておきたい術前・術後の管理とケアの実践」(ペリネイタルケア 2013年新春増刊)です。
こちらはもう少し、臨床実践的な知識がまとめられています。
でもそのどちらにも私が知りたいと思う話題はありませんでした。
帝王切開術後のお母さんの回復過程はどうか。そしてどのような休息が必要か。
帝王切開術後の新生児について、体重増加期に入る時期が比較的ゆっくりな印象があるけれども全体的な統計はあるのか。
帝王切開術直後のインシデントレポートにはどのようなものがあり、どのような対策が必要か。
書店の医学・看護関係のフロアをまわっていると、周手術期看護あるいは、外科・整形外科などの看護ではそれぞれの手術に関しての看護の本がたくさん出版されています。
産婦人科だけが、帝王切開術のみならず婦人科手術についても看護の本がありません。あっても20年から30年前とほぼ同じ内容です。
この差はどこからくるのでしょうか。
そして上で紹介した2冊の本では、「帝王切開と母乳育児」「帝王切開と早期皮膚接触」といった話題にかなりのページがさかれています。
その手術の特殊性やリスクを理解した看護が明らかにもされていないのに、これはいったいどういうことなのでしょう。
次回は、他の外科手術看護の本を参考にしながら、この我と彼の違いを見てみようと思います。