こんさんから、こんさんとこんさんの赤ちゃんについて新聞記事で紹介されたことを教えていただきました。
こんさん、ありがとうございます。
昨年7月に初めてこんさんからコメントをいただき、こちらの記事やこちらの記事を書いたり、コメント欄でも往復書簡のようにやりとりをさせていただきました。
毎日新聞の「母と乳」という記事は、ちょうど昨年の7月から始まったようです。その第3部の「下」の記事にこんさんとこんさんの赤ちゃんのことから問題提起がされています。
少し長いのですが、3つの記事について全文をそのまま紹介しながら考えてみようと思います。
まあ、「考え」というほどではなく、今回は感想ですが。
第3部 生後のリスク/上 「3日分のお弁当」招く誤解
(毎日新聞2016年4月14日)
母乳育児は出産直後からスタートする。母乳が出るようになるまでの間、赤ちゃんの栄養は足りているのか。出産で疲労した母親と赤ちゃんだけで過ごすことは、安全面のリスクを伴わないのか。連載第3部は、母乳育児の始まりにある課題を考える。
どうしてこんなに減ったんだろうー。東京都の主婦(49)は1年前の冬、長女(5)の母子手帳を見返して思った。出生時に3360グラムあった体重は5日後に11%減った。通常は2週間程で出生時の体重に戻るが、1ヶ月後も回復していない。母乳が出ず泣き続けた我が子の姿が蘇った。「脳や体に十分な栄養が届かなかったからでは」。長女の心身の発達に不安を感じる中、原因を見つけたように見えた。
初めての出産。本やインターネットで調べ母乳育児に熱心な病院を選んだ。しかし簡単に母乳は出なかった。
「赤ちゃんは3日分のお弁当を持って生まれてくるから大丈夫」。助産師に励まされた。指導に従い一晩で25回授乳したこともある。マッサージで胸は青あざだらけになった。哺乳瓶に慣れると母乳を飲まなくなるからと、粉ミルクはほとんど提供されなかった。
●ミルクの指示なく
退院後も、ミルクはできるだけ足さないように念を押された。病院の母乳外来にも助産院にも通い、母乳の出やすい食事のアドバイスやマッサージを受けた。転機は1ヶ月健診。体重が増えていないため、小児科医がミルクを足すよう指導、半年後にはミルクだけになった。
成長するにつれ、相手の心情をくみとるのが苦手でコミュニケーションに難がある長女の発達に、疑問を感じるようになった。インターネットでは、乳児期の栄養状態が発達に影響する可能性が指摘されていた。病院からカルテを取り寄せると、体重が大幅に減ったことで低血糖になる可能性が記されていた。
医療関係者の間では退院時に体重が10%以上減っていれば注意が必要とされる。だが当時、ミルクを足すようにとの指示はなかった。
長女は発達専門の小児科医のアドバイスで今月3月、療育施設に通い始めた。発達が遅れた原因ははっきりわからないが、主婦は「あの病院で出産しなければよかった」と自分を責める。母乳だけを与えることを求めた病院にも疑問を抱く。「努力しても母乳が出ない人はいること、赤ちゃんを危険にさらしていることを、もっと認識してほしい」と訴える。
娘の寝顔を見ては「ごめんね」と心の中で謝る夜を重ねている。
●低出生体重児増え
新生児は水分や脂肪などのエネルギー源を持って生まれてくる。これが「3日分のお弁当」。多くの母親が「初めは母乳が少なくても大丈夫」などと授乳指導で助産師から聞かされる。
しかし母乳育児に詳しい昭和大学江東豊洲病老いんの水野克己教授(小児科)は「誤解を招く」と指摘する。
理由は減少傾向にある新生児の出生体重だ。2014年の平均出生体重は男児3040グラム、女児2960グラムで、ともに1975年より約200グラム少ない。2500グラム未満の低出生体重児は14年に9.5%を占め、30年間で割合が倍増した。水野教授は「どんな新生児も十分なエネルギーを備えているとは限らないことを前提に、授乳指導に当たるべきだ」と言う。
12年2月に出産した福岡県の女性(33)の長女は退院時、出生体重から11%減った。産院は「原則的にミルクは与えない」方針だった。授乳しても泣きやまず、助産師に不安を訴えたが、返ってきたのは「お弁当」の話だった。
「娘がやせていくのは自分のせい」と思い夜中も授乳を続けた。退院時に産婦人科医からミルクを足すよう指示されたが、1ヶ月健診で「十分出ているから母乳だけで大丈夫」と言われ、混乱した。
結局、生後4ヶ月で完全ミルクに切り替えた。女性は「娘がうまく母乳を飲めず、私の授乳リズムも乱れた。母子をよく見て指導して欲しい」と話す。
●医学的根拠示して
「3日分のお弁当」は、母乳育児に積極的だった医師が、母乳が出ない人を安心させるために言い始めたとみられる。日本助産師会の岡本喜代子会長は助産師の教科書には書いていない。母乳の出方には個人差があり、3日間ミルクを足さなくていいとは考えていない」と話す。
母乳育児を推進する日本ラクテーション・コンサルタント協会の奥喜起久子・教育研修事業部長(小児科医)も「日本独自の表現」とみる。母乳育児を軌道に乗せるには、生後すぐ頻繁に授乳し母乳の分泌を促すことが大切だが、「母親たちにミルクをあげたら失敗だと思わせてしまうのは望ましくない」とも指摘する。
水野教授は「母親自身が自分の授乳方法に納得し、自信を持てるかが一番重要」と強調する。「助産師らは母親の意志を尊重し、経験や信条ではなく、必要なら検査データーや医学的に根拠のある説明をして、支援しなければならない。
あー、なんだかな。
前線に送られた兵士に戦争責任を押し付けられた、そんな印象です。言葉は悪いのですけれど。
「母乳育児は出産直後からスタートする」。
まずは冒頭のこの一文から「それはどういうことなのか?」「本当なのか?」「母乳育児とは何か」と疑ってみないと、きっといつまでもこの母乳とミルクの議論になってしまうのではないかと思います。
「母と乳」というタイトルだから視点は母乳になってしまうのだと思いますが、「新生児と乳」にしてみたら別の世界が見えるのではないかと思います。
誰が母乳育児という言葉を求めているのだろう。そしてそれは何のためだろう。
そしてなにより、私たちが新生児についていかに知らないのか認めること。
それが「科学的」な思考の第一歩のように思います。
しばらく、この毎日新聞の連載記事について感じたことや考えたことが続きます。
「母乳育児という言葉を問い直す」のまとめは こちら。