水のあれこれ 70 <水の中を歩くように泳ぐ>

ワールドカップ東京大会は、選手の皆さんのアップの様子を見るのを楽しみにしていました。


カテインカ・ホッスー選手は2日間とも、海外選手の中でも一番にプールサイドに現れ、念入りに準備体操をしていました。
印象としては、体幹の筋肉に神経を向けながらの準備体操のように見えました。
昨年までに比べて、プールに入ってのアップは短く、しかもさらっと泳いでいたような感じです。
それでも相変わらず、アップも試合もしなやかな泳ぎに、今年も魅せられました。


私の席のすぐ目の前で古賀淳也選手がアップを始めたので、浮き上がりのコツなどを間近でずっと観ることができました。
100m背泳ぎの試合本番では中盤ぐらいまでは惚れ惚れとするほど美しく、それでいてパワフルな泳ぎで先頭だったのですが、そこからはなぜかスピードが落ちたのか落としたのか、結果はちょっと残念でした。


ただ、古賀選手の体つきが一回り大きくなった感じで、欧米の選手のような泳ぎに近づいた印象を受けました。


筋力がアップすれば泳ぎ自体もパワフルにはなるのですが、それだけではなく、カテインカ・ホッスー選手やサラ・ショーストロム選手、チャド・レクロス選手などの泳ぎを間近で観ていると、まるで水の中を歩いているような泳ぎ方にみえるのです。
古賀選手もそんな感じです。


言葉ではわかりにくいですね。
「地面の上を歩く」場合には人は立っているのですが、水の中では横たわっているわけですから「歩くような泳ぎ」とはどういうことなのか。


「ヒトから魚へ進化する」で紹介した、古賀淳也選手のローリングのビデオを観てから、泳ぐ時にはイメージトレーニングにしていました。
最初は見よう見まねで肩のあたりを動かすだけでしたが、だんだんと抵抗の無い泳ぎを意識していくうちに、ふと腰のあたりからぐいっと前に進むような感覚が出始めました。
キックをしなくても、この腰のあたりからぐいっと前に進む感じがあると、水の中を「歩く」ような感じでふわっと前に進むのです。


ホッスー選手の泳ぎについて、「フワッフワっと水の中をうねりながらまるで歩いているか、空を飛んでいるように、水の抵抗を感じさせないまま、ひと掻きごとに相手との距離をあけていく」と書きましたが、そんな感じです。


もちろん試合ではスピードをだすために腕や脚の筋力が大事でしょうが、こうした「歩くように泳ぐ」選手を観ていると、体幹の筋肉が発達して手足は背びれとか尾びれ程度にみえてきます。
ホント、体幹の筋肉だけで泳ぐ魚になっちゃったのではと思うような。


レース中にこうした泳ぎを見せる選手を見つけると、一緒にフワリと泳いでいるような感じになって鳥肌が立ちそうになるのです。





「水のあれこれ」まとめはこちら