専門性とは 1 <専門性とは>

仕事という現実の話に「生きる力」なんてファンタジーが使われることに少し驚きつつ、出産という生死が隣り合せの場面でも夢物語に支配された30年だったので、そんな時代の雰囲気なのかもしれません。


大人のほうがそれぞれの仕事が実際にどのようなものなのか知らず、またどのような仕事であってもいきなり新人から達人にはなれず経験は積んでいくものであるという現実から目をそらし、相手の仕事や経験への敬意を持たなくなってしまった結果なのかもしれませんね。


そんなことを考えていたら、また愕然とするニュースが。
テレビをつけっぱなしにしていたら、「介護・建築・農業のように専門性の高くない仕事に外国人を」というのが聞こえてきたので、すぐにメモをしました。
あとでニュースを検索しても原文をみつけられなかったのですが、おそらく「働き方改革」のひとつに関連したものではないかと思います。


ああ、これだ!
この「専門性が高くない」とひと言で言われてしまうことが、仕事の葛藤の大きな部分ではないかと、


「病人の世話なんて家族だってできる」の時代から看護の専門性が社会に認められるようになっても、前近代的な労働条件と闘い、あるいは「専門学校卒」として下に見られることが看護基礎教育の大学化への原動力となったのだろうと思います。


その専門性という言葉をさらに他職種と境界線を引き、独立して仕事をすることができるという意味でこだわったのが、「正常なお産は助産師だけで」という流れでした。


「介護・建築・農業」は本当に専門性の高くない仕事ですか?
その分野でも、補助的な仕事であれば経験や知識のない人に実地訓練だけで仕事を任せられる部分もあることでしょう。
でも、それはごく一部であって、その職種全体の話ではないはず。
ところが、こういう「○○という仕事は誰にでもできる」かのような社会の認識が、現場のやる気を削ぎ、その仕事につくことをためらわせる理由にもなるのではないかと思います。


あるいは、ねじれたコンプレックスから自分たちを大きく見せようと、拙速な理論化や学問化を急ぎ現実の問題の解決策とは違った方向へと向かわせることになるかもしれません。


たとえば1980年代にはまだ「呆け老人」と言われたり、高齢者を家族だけで世話をするしかなかった時代から介護という分野が広がり始めて30年ほどですが、看護職の私から見てもとても専門性の高い仕事になったと驚いています。


では「専門性」とは何か。
おそらく、私が助産師の世界への違和感からこのブログを始めたのも、この専門性という言葉への葛藤があったからだと思います。



「専門性が高くない仕事だから外国人に」なんて言ってしまう「政治家」は、専門性が高い仕事なのでしょうか。
そんな素朴な疑問も湧いてきました。


ということで、不定期にまた続くタイトルができました。



「専門性とは」を考え始めた記事。
ケアとは何か 8 ケアの専門性とは
つじつまのあれこれ 9 専門性とは何か

「専門性とは」の記事。

<2018年>
2. 正確に記憶する能力が優れていること
3. 「専門職」の指すもの
4. 看護助手から再び看護補助者へ?
5. 専門雑誌とは何か
6, 学芸員
<2019年>
7. いくつの仕事によって構成されているのか
<2020年>
8. 崖っぷちに立つ
9. 防災エキスパート
<2021年>
10. 「長良河口ぜきのしくみ」
<2024年>
11. 専門性を認めず労働価値を貶める