つじつまのあれこれ 16 液体ミルクが乳腺炎を増やす?

例のFAXが本当に小児科医に書かれたものなのかとちょっと驚いたもうひとつの理由が、以下の部分です。

 母乳で育てているお母さんが、便利だからという理由で、本来は不必要なのにミルクを使うことで授乳回数が減ってしまい、母乳がその分足りなくなってしまうこと、乳管が詰まって乳腺炎を起こすことも同時に知っておいて欲しいと思います。

 

前半部分から、おそらく「母乳だけで育てている」人について書いたのかもしれません。

混合栄養の場合であれば、粉ミルクを液体ミルクに変えただけの話ですから、「母乳がその分足りなくなる」わけでもないですし。 

 

「(母乳だけで育てている人が)本来は不必要なのにミルクを使うことで授乳回数が減ってしまい、乳管が詰まって乳腺炎を起こす」という考え方は、テレビで周知させなければならないような情報でしょうか。

 

*授乳間隔があくと乳腺炎になるのか*

 

おそらく、「ミルクを足すことで授乳間隔があくことで乳腺炎になりやすい」ということを伝えたかったのだろうと思いますが、そもそも授乳間隔がどれくらいあいて、それによってどれくらいの人が乳腺炎になったのかと質問されたら、程度の問題ですから、現時点では「わからない」としか答えられないのではないかと思います。

 

 

「授乳間隔があく」のはミルクの補足が一因のこともあるかもしれませんが、母乳だけの授乳でも起こります。

例えば生後数日の生まれたばかりの新生児でさえ、頻繁に吸う時間帯と何をしても起きない時間帯があります。

あるいは、お母さんたちの育児記録を見せていただくと、授乳と赤ちゃんの睡眠が細切れの日もあれば、長く眠っている時間がある日もあります。

赤ちゃんも日々変化しているので、1ヶ月前後とか3ヶ月ごろ、あるいは離乳食が始まったころなど、急に授乳間隔が開きだすのはたいがいのお母さんが経験されていると思います。

 

それですぐにうっ滞性乳腺炎になるかというと、そういうわけではありません。

少し張っちゃったぐらいで対応しているうちにおさまり、次第に赤ちゃんの授乳間隔にあった分泌量になっていくのでしょう。

 

ですから冒頭のように、母乳だけで育てているお母さんに「ミルクを使うと乳腺炎になる」というのは医療従事者としては不正確な情報ではないかと思いますし、液体ミルクの話題に対し反論として持ち出すのは筋が悪いといえそうです。

 

また、「本来は不必要なのにミルクを使うことで授乳回数が減ってしまい、母乳がその分だけ足りなくなる」の部分も、程度の問題といえそうです。

 

 

そして何より、お母さんやお父さんが赤ちゃんの状況とご家族の生活に合わせて選択したことに対して、「母乳育児をしている人を悲しませるな」というのは変な話ですね。

 

 

投書は自由ですが、紹介したNHK側の判断はどうなのだろうという内容だと思います。

おそらく「小児科医」「国際基準」あたりの2つの権威を前に、それ以上考えなかったのかもしれません。

 

その背景にある考え方にどのような歴史があるのか知らなければ、またこうしたつじつまの合わない話が繰り返されることでしょう。

 

 

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