10年前のニュースかと思った記事ですが、同じ頃にもうひとつ「10年前の番組」の再放送かと思ったものがありました。
このところ「自然なお産運動」の終焉を感じていたので、助産所のホームページの定点観測も、助産所の話題からも少し遠ざかっていました。
まだ分娩を取り扱う助産所はありますが、ホームページからは民間療法などの記載が少なくなり、分娩も「異常時には早めに転院・搬送」していることが書かれていて、10年前に比べるとリスクマネージメントが浸透してきた印象です。
さて、その真夜中に放送されていた、助産所を紹介した番組です。
「7つのルールを手がかりに、輝く女性たちの素顔を映し出す」という内容でした。
その7つとは、こんな感じ。
お産間際はみんなでカツ丼を食べる
さらしにメッセージを書く
汗のかき具合でお産の進みをみる
料理はしない
お産の後も付き合い続ける
お産が進まない時は車でカーブを走る
生きている限りはお産に立ち会い続ける
「汗のかき具合でお産の進みをみる」も、おそらく全国あちこちにいる中堅レベルの助産師なら汗や表情などで進行具合がわかることでしょう。
そして「中には最後まで全く汗が出ない産婦さんもいる」という、自分の仮説の思い込みに気づくのも、中堅から達人ぐらいのレベルでしょうか。
さらしの腹帯はほとんど見かけなくなりましたし、みんなでカツ丼を食べる会も、お産後にも付き合うも、個人の好みで楽しければそれもいいかもしれません。
「生きている限りはお産に立ち会い続ける」も、定年がない施設なら可能です。
びっくりしたのは「お産が進まない時は車でカーブを走る」でした。
そのあたりを散歩したことがあります。カーブがあるということは坂道があるのですが、映像ではその坂道のカーブを妊婦さんを乗せて走っていました。
この番組スタッフや「一般の人」は、この内容が輝いているように見えるのでしょうか。
医療介入はしないをうたうことが多い助産所ですが、産科診療所と同じ一次施設の医療機関に分類されます。
診療所や病院で「お産が進まないから車でカーブを走ってきて」といわれたら、はっと我に返って「ここは大丈夫か」と不安になるのではないかと思います。
なぜ助産所だと輝いてみえるのか。
医療とはなんだろう。
シュールですね。
助産師だけでなく、社会全体もまたこの出産が驚異的に変化した時代を受け入れるのに時間がかかっているのかもしれませんね。
「シュールな光景」まとめはこちら。