今回の散歩は母の記憶を歩くことも目的のひとつでした。
商業高校を卒業して証券会社に勤めていた時ですから、母が20歳前後の頃の思い出だったようです。
新見、吉備津神社そして津山、その3カ所を計画に入れようとしましたが、列車の乗り継ぎを考えると、津山は今回はあきらめるしかありませんでした。
*吉備津神社*
用水路が張りめぐらされた田園風景のなかに、浮き上がるように神社と参道が見えて印象に残ったのが吉備津神社でした。ここが、今回の最初の目的地です。
6時に品川を出て、9時4分に岡山駅に到着しました。
新型コロナウイルス感染症の影響で新幹線も在来線も乗客がぐんと少なくなっていたのに、なぜか吉備津神社駅では10人ほどが降りました。平日なのに、ここを訪ねる人がいるようです。
駅を降りると、まっすぐな参道が山へ向かって通っています。水田の真ん中にある、岡山の独特な白っぽい土の参道を神社へ向かって歩きました。
小高い丘の上に本殿があり、道路をはさんで宇賀神社があります。
その駐車場の一角に大きな銅像が建っていて、犬養元首相でした。生家のある庭瀬からは、直線距離で3~4kmぐらいでしょうか。
行く前に地図で、この宇賀神社に大きな池があることに気持ちが惹かれていたのですが、実際に美しく静かな風景でした。次の列車まで30分ほどしかないので、ここでご飯を食べることにしました。
岡山駅に到着した時に、なぜか引き寄せられるように朝から祭り寿司を買ってしまいました。荷物になるのになにやってるんだかと思いましたが、ここで食べておいて正解でした。これ以降、食事ができるようなお店もコンビニもなかったのでした。
駅に戻る道では、畑の手入れをしている男性や自転車で通り過ぎた男性の後ろ姿が、祖父にそっくりでした。
*新見へ*
ふたたび吉備線に乗り、総社で伯備線に乗り換えました。備中高梁で特急やくもに乗り換えて、新見に到着。
この辺りから魚の形をした鴟尾(しび)のある家が増えたと記録した場所に、わずか3ヶ月後に降り立つとは考えもしませんでした。
母の記憶にある洞穴や滝は「バスで行った」というので、今回は無理そうです。
地図を見ながらどこを歩こうか考えていましたが、高梁川に合流する川のそばに城山公園があったので、そこを目指しました。
車窓からは見えないのですが、市の中心部の高梁川の水量は多く、そして岩が独特の形をした川底が続いていました。
甌穴(おうけつ)という言葉を初めて知りました。激しい流れが、岩を削っていったのでしょうか。
城山公園の手前で、姫新線の線路と平行して川が合流していますが、その水量も多く、そして街のあちこちから高梁川に流れる小さな水の流れがありました。
城山公園では早春の花が咲き始めていました。新見市観光協会のパンフレットを見ると、その南側には新見御殿町と呼ばれる昔からの建物が保存されている一角があるようです。
もっと歩いて見たかったのですが、芸備線に乗るために、残念ながら駅へと戻りました。
半年ぐらい前までは地名さえ知らなかった場所を訪ね、その名を聞いただけでさまざまな記憶が呼び起こされてくるのですから、散歩はやめられませんね。
今回の散歩の最終日にはこの高梁川の河口付近に広がる干拓地を歩く計画です。
母の思い出話から、背中を押されて高梁川の上流から下流まで見て歩く計画になったのでした。
そして、まだ散歩の始まりだというのに、山あいに入って行く姫新線の線路を見て、次はあの路線を制覇したいと思ったのでした。困りましたね。
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