観察する 72 クマとドングリ

今年は「クマ出没」のニュースが多いですね。

ニュースで話題になって耳にする頻度が増えたのではなく、本当に「圧倒的に多い」らしいことが報道されていました。

クマ出没もう1万件超 『今年は圧倒的』 ドングリ凶作背景か 

(産経WEST   2020年10月23日)

 

クマの出没が相次いている。山間部だけでなく市街地での目撃もあり、石川県では商業施設にクマが侵入、射殺されるまで施設は臨時休業となった。エサであるドングリの凶作が要因とみられ、全国での出没確認はすでに1万件超。人の死傷事故も起きており、専門家は注意を呼びかけている。

 

10年ぶり「出没警戒情報」

「今年は圧倒的に多い」

クマの情報を集める自治体関係者は口をそろえる。環境省によると、4〜8月の全国のクマの目撃情報は速報値で1万1112件。過去と比較しても、多いペースで推移する。

10月19日朝、石川県加賀市の商業施設「アビオシティ加賀」にツキノワグマ1頭が侵入したと110番があった。体長約1.3メートルの雄の成獣。約13時間後、施設内で地元の猟友会が射殺した。けが人はなかった。

加賀市の担当者は『(クマの出没は)これまでは山間部や民家が多く、商業施設への侵入は記憶にない」。石川県内の4〜10月のクマの出没数は400件。9月だけで100件に上るなどしたことから、県は10年ぶりに『出没警戒情報』を発令した。10月22日にも、金沢市の路上で、新聞配達のアルバイト男性(77)がくまに襲われ左手をかまれた。

 

冬眠に備えた行動?

日本国内にはヒグマとツキノワグマの2種類が生息する。本州や四国に生息するツキノワグマは食料の9割以上が植物。特に秋は12月ごろからの冬眠に備え、ドングリなどの木の実を食べて栄養を備える。

クマが人里へと行動範囲を広げている地域では、ドングリ類が凶作傾向にあるとされる。

 

新潟県新発田(しばた)市の県指定文化財『市島邸』。10月18日、敷地内にクマが出没し、男性客が頭を殴られた。新潟県では今秋、ドングリ類の多くが凶作や不作に。市島邸の庭園の木に実る栗や柿が目当てだったと見られる。新発田市は実を木から落とすなどの対策を取り、安全確保ができるまでの休館を決めた。

 

国も連絡会議開催へ

関西でも注意が必要だ。京都市の山間部や京丹後市南丹市などで目撃情報がある京都府でも、ドングリ類が軒並み凶作。同じく凶作だった昨年は、クマの目撃数が前年比で約1.4倍となっており、府は警戒を呼びかけている。

人的被害も目立つ。これまでに少なくとも全国で2人が死亡。また環境省のまとめでは、4〜8月で59人がツキノワグマに襲われ負傷した。

加賀市の商業施設へのクマ侵入などを受け、国は関係省庁の連絡会議を26日に開催することを決めた。担当者は『ドングリの結実状況などでクマの出没が増えている地域もある。自治体からの情報に注意してほしい』と話している。

 

ベビーラッシュも遠因か

相次ぐクマ出没の背景を、大日本猟友会(東京)の朝の能昭専務理事はこう分析する。『(一昨年に)クマの『ベビーラッシュ』を迎えていたのでは」

直近とは異なり、平成29年はドングリが全国的に豊作だった。浅野専務理事は同年に繁殖活動が進み、翌年以降に多数のクマが誕生したとみている。

一方、東京農業大の山崎晃司教授(動物生態学)は「今年に限らずクマの出没件数は近年高止まり状態にある」と指摘。少子高齢化生活様式の変化に伴い、放置された里山にクマがすみ着くケースは珍しくない。クマの生息地域は広がっているとの見方があり、出没は今後、さらに増えることも考えられる。

「クマが身近にいるという前提で生活するべきだ」と山崎教授。「庭先に残飯を捨てないようにするなど、クマをひきつけない工夫も必要だ」とする。

 

それでも実際にクマと遭遇したときにはどうすればいいのか。

浅野専務理事によると、クマは本来、臆病な性格で人間を恐れている。そのため「バンザイをしてクマより自分が大きいことをアピールすることが効果的」。腕力では絶対に勝てないため「もし目があったら背を向けずに後ずさりをしながら逃げるべきだ」と話した。

 

 

クマの出没が多いという話を聞くと、つい「エサ不足」と短絡的に考えてしまいやすいのですが、その前に「エサが豊富だった年の繁殖」も関係がある可能性があるのですね。

 

「クマのエサ実る森を拡大 福井県が『針広混交林』倍増計画」(岩手日報 2020年10月23日)では、福井県ではすでにドングリが実る広葉樹を増やす計画が進められているという福井新聞社の話が紹介されていました。

それでも「ドングリの豊凶の仕組みは十分にわかっておらず、クマの人身被害対策としては今後の研究課題」という福井県自然環境課の方の話を紹介していました。

 

小学生の頃に遊んでいた裏山も、当時は聞いたことがなかったような野生動物と最近では出会うようです。

半世紀の間に、針葉樹林から広葉樹林の割合が増えていったことが遠目にもよくわかります。

森の復活とともに、動物も増えてきたということでしょうか。

そうした山の変化を、何十年という単位で観察している人たちがいるのだと、クマの怖さはさておいて心強いものを最近のクマのニュースに感じています。

 

 

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