事実とは何か 84 事故物件の話が孤独死に

たまたまつけっぱなしにしていたテレビで、「事故物件」についての番組がありました。

ちょっとおどろおどろしい音楽や映像で、そこで亡くなった方や残された家族への負担や戸惑いが語られ、そして高齢者が家を借りるのがどんなに難しいかも語られていました。

 

身につまされますよね。

ちょうどこの数年、私も自分の最期に向けて色々と考えて、調べ始めていましたから。

行政も以前に比べて高齢者向けのサービスがあることがわかりました。

しかも、たとえ一人暮らしになっても、ほかの親族の手を煩わさなくて済むような公的なサービスまで出て来たことに、希望の光を感じました。

 

ただ問題は、準備したくても「65歳から受付」「抽選制」といった壁と、どんな方法があるのかを知りたくても、まだ現役で働いている私が気軽にいけるような相談窓口がないことです。

歳をとるための準備講座のようなものもあるのですが、ちょっと怪しい方向に連れ込まされそうなので、公的なものがあるとありがたいですね。

 

それと、例えば無事に見守り付きの高齢者住宅に当選して入居でき、一人暮らしでも行政の緊急時の支援サービスや入院時や死去時の書類手続き代行サービスを申し込めて一安心と思っても、どこが終の住処になるのかわからないのが高齢者になるということです。

 

いつまで生きるのか、全くもって予測不能ですからね。

 

 

*誰もが一人で自分の最期を準備する必要がある*

 

母はようやく公的な特別養護老人ホーム、しかも昔では考えられない個室が基本の施設に入れたかと思うと、体調が悪くなると別の病院への入退院で移動し、そしていつ戻るかわからない施設への住居費も発生することになります。

年金だけでは終の住処にも入れないし、「終の住処」というのは究極の言葉だと思うこの頃です。

 

あの番組で、「年金では払えないから」とお風呂もついていない部屋を斡旋されていた80代の女性が映っていましたが、この方に必要なのは見守り付きの公的な住宅ではないかと思えました。

 

ところが、なぜか事故物件の話から孤独死の話になり、「話を聞く人がそばにいることが大事」という締めくくりになってしまいました。

具体的な解決方法は、「高齢者の住宅問題支援窓口」のQRコードが映っただけでした。

 

現に切羽詰まっている高齢者のどれだけが、この番組を見てQRコードにアクセスすることでしょうか。

なんだか違和感だけが残りました。

 

*違う視点から作られた番組だった*

 

翌日、NHKの「「事故物件」はダメなのか?孤独死自死が増える社会で」(NHK NEWS WEB、2021年10月5日)を読んで、違和感の謎がわかりました。

 

今年、社会人になった著者が「事故物件はいやだけれど、どんな需要があるのだろう」という疑問から調べたものだったようです。

その視点もまた「当事者」ではあるのですが、高齢者の住宅問題を混ぜてしまったからわかりにくい話になったのだと理解できました。

 

その年代の方にすれば、「自死」「孤独死」あるいは高齢者になって一人暮らしということも途方もなく不安や恐怖感を感じるのかもしれません。

 

ただ、長く生きればそれは想像上の不安ではなくなり、現実の解決しなければならない問題になるのです。

 

60代になったばかりの私にすれば、残された家族や親族の手を煩わさないための住宅や手続きの問題を、今の元気なうちに計画するための相談できる窓口が欲しい。

そこに切り込んでくれたら嬉しいのですけれど。

 

 

 

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