行間を読む 169 「球磨川水系緊急治水対策プロジェクト」

引堤を検索しているときに、「球磨川水系緊急治水対策プロジェクト」(令和3年1月29日、球磨川流域治水協議会)という資料を見つけました。

 

◯令和2年7月豪雨により甚大な被害が発生したことを踏まえ、球磨川においては、国、県、市町村が連携し、被災した箇所で、河道掘削、堤防整備、輪中堤・宅地かさ上げ、遊水地等の取り組みを集中的に実施することにより、令和2年7月豪雨と同規模の洪水に対して、越水による氾濫防止(人吉市区間等)、家屋の浸水防止(中流部)など、流域における浸水被害の軽減を図る。

◯令和3年出水期に向けて、浸水被害箇所等の堆積土砂の撤去やタイムラインの改善等を緊急的に実施する。

 

あの甚大な水害の調査や対応が半年以内にまとめられ、さらに次の「出水期」に向けて準備がされていたことを知りました。

 

 

 

*短期・中期・長期計画*

 

さらに、2029年(令和11)ごろまでの対応が3段階に分けらている説明がありました。

 

【令和3年度出水期まで】可能な限りの堆積土砂の撤去及び堤防決壊箇所の本復旧を実施する

 

【第一段階】堆積土砂の撤去、災害復旧工事を進めるとともに上下流バランスを考慮の上、河道掘削を最大限実施し堆砂を図る。輪中堤・宅地かさ上げをまちづくり等と連携して完成させる。また、遊水地、引堤等に必要な用地確保に着手。県区間においては放水路整備や河道掘削等を推進。流水型ダム、市房ダム再開発の調査・検討に着手し進捗を図る。

 

【第二段階】早期に遊水地(本川)を完成。河道掘削[拡幅部](人吉地区)、引堤、県区間堤防整備、遊水地(支川)等の完成。引き続き流水型ダム、市房ダム再開発の進捗を図る。

 

大きな災害のニュースがあるとしばらくはその地域がどうなったのだろうとニュースを追っているのですが、しだいに耳にしなくなるとその後の状況を想像することも少なくなります。

生活を維持するための見通しを立てるために災害の復旧過程のどの段階なのかを知ることは大事だと、東日本大震災を経験して思うようになりました。

 

以前はこういう資料も目が滑ってあまり頭に入ってこなかったのですが、水のそばを歩くようになってから「このように守られてきたのか」と目に入る言葉が増えました。

 

 

*「3つの柱」*

 

プロジェクトの概要に「3つの柱」が書かれていました。

①氾濫をできるだけ防ぐ・減らすための対策

②被害対象を減少させるための対策

③被害の軽減、早期復旧・復興のための対策

 

一見、味気ない表現ですが、たとえば自分の仕事では「母子ともに安全に分娩が終了する」が究極の目標であるように、本質的なことというのは味気ない表現になりやすいものかもしれません。

ところが人の耳目を惹くようなさまざまな価値観や、一見魅力的なプロパガンダに翻弄されると本質を見失い本質に立ちかえるまで遠回りをすることになる

なかなかこういう失敗というのは理解されにくいものかもしれませんね。

 

毎年あちこちで自然災害が起き、その予測不可能な理不尽な現実に地道に対応している方々が今日も各地で働いている。

なんだかすごいことだとしみじみと感じながら、この資料を読みました。

 

 

 

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